動物の英語絵本を開き、歌いながら同じ手の動きを楽しむ4歳頃の子どもと保護者のクレヨン画

幼児教育・学び

英語絵本・歌・語りかけにはどんな役割がある?

英語の絵本を読んだり、英語の歌を流したり、日常の中で短い英語を話しかけたりすると、幼児期の子どもにどのような意味があるのでしょうか。

「早く始めれば英語が得意になる?」「歌は聞き流すだけでもよい?」「発音に自信がない親が読んでも大丈夫?」と迷う人もいるでしょう。

英語絵本、歌、語りかけは、どれも子どもが英語に出会うきっかけになります。
ただし、同じ働きをするものではありません。また、触れる時間を増やせば、自動的に英語を話せるようになるわけでもありません。

この記事では、三つの活動がそれぞれどのような経験をつくるのかを、幼児期の言語発達と第二言語学習の研究から考えます。


この記事で分かること

  • 英語絵本・歌・語りかけが、それぞれつくる経験の違い
  • 共有読書や歌を使った外国語学習の研究で分かっていること
  • 聞き流しと、人とのやりとりを同じものと考えない理由
  • 発音に自信がない大人が無理なく関わる方法
  • 年齢や英語経験に合わせて選ぶときの手がかり

三つの活動は「英語を身につける魔法」ではない

英語絵本、歌、語りかけの役割は、短期間で成果を出すことより、英語の音や表現に意味のある形で出会える場をつくることにあります。

英語絵本では、絵や物語の流れが、聞こえたことばの意味を考える手がかりになります。

歌では、リズムやメロディーに乗せて同じ音やフレーズを繰り返せます。
語りかけでは、子どもが見たものやしたことに、その場でことばを結び付けられます。

この三つは、子どもが英語へ近づく入口を増やします。

しかし、絵本を何冊読んだか、歌を何時間聞いたか、何歳から始めたかだけで、その後の英語力が決まるという根拠はありません。

ことばの育ちは、聞いた量だけでなく、子どもが何に注目し、どこまで意味をつかみ、どのように相手とやりとりしたかとも関係します。
英語に触れることを、毎日の達成課題や親子の競争にしないことが出発点です。

英語絵本は、絵・ことば・経験を結び付ける

絵本を一緒に見る時間には、書かれている英文を聞くことだけでなく、絵を指さす、次の出来事を予想する、登場人物の気持ちを話す、子どもの経験を思い出すといったやりとりが含まれます。

共有読書の研究が示していること

1~6歳の子どもを対象とした19件のランダム化比較試験をまとめた研究では、大人が子どもと絵本を共有する方法を学ぶ介入によって、子どもの「話すことば」と「聞いて分かることば」に、小さいながら改善が見られました。

大人の読み方や応じ方には、よりはっきりした変化が見られています(Dowdall et al., 2020)。

ただし、この研究は英語を外国語として学ぶ日本の子どもだけを扱ったものではありません。
「英語絵本を読めば同じ変化が起きる」と、そのまま置き換えることはできません。

第二言語として絵本を使った研究もあります。ノルウェーの幼児教育施設で、家庭では別の言語を使い、園でノルウェー語を学ぶ3~5歳の子ども約460人を対象に、内容のある絵本を中心とした活動が行われました。

絵本を使わなかった通常の保育と比べ、ノルウェー語の語彙や文法などに改善が示されています(Grøver et al., 2020)。

この結果は、絵本を中心に、園と家庭で計画的な活動を続けたプログラムの成果です。
家庭で英語絵本を一冊読むだけの場合や、日本語を母語とする子どもが生活の一部で英語に触れる場合とは条件が異なります。

「読む」より「一緒に見る」と考える

多言語の幼児と絵本を読む研究を整理した2025年のレビューでは、二つの言語を交えたやりとり、子どもの発言を引き出す関わり、大人がどの言語を選ぶかが、共有読書を支える要素として整理されました。

同時に、対象となる言語や地域が偏っており、研究がまだ少ないことも指摘されています(Zhou et al., 2025)。

英語だけで最後まで読み切ることを目標にしなくてかまいません。
子どもが絵を指さしたら、その絵について日本語で話し、覚えやすい英語を一つ添える方法もあります。
内容を理解できることと、英語の音に触れることは、どちらか一方を選ばなければならない関係ではありません。

幼児期全体の言葉の育ちについては、0~6歳の言語発達も参考にしてください。

英語の歌は、音とリズムを繰り返し楽しむ入口になる

歌には、同じ表現が繰り返されやすく、声や身体の動きを合わせやすいという特徴があります。
子どもが気に入れば、大人に言われなくても繰り返し聞いたり、声や身振りで参加したりすることがあります。

そのため、英語の音のまとまりやリズムに親しむ入口として、歌は使いやすい活動です。
しかし、「歌なら単語や文法が自然に身につく」とまでは言えません。

歌の効果は、研究によって結果がそろっていない

2024年に公表されたシステマティックレビューは、2~18歳の第二言語・外国語学習者に歌を使った60件の介入研究を整理しました。

多くの研究は語彙、文法、聞く・話す・読む・書く力への肯定的な結果を報告していましたが、研究の進め方に弱点があるものも多く、歌が学習成果を生んだと確実に判断するには根拠が足りないと結論付けています(Hamilton et al., 2024)。

2~3歳のスペイン語話者17人が英語の単語に触れた小規模研究では、物語、歌、物語と歌の組み合わせが比較されました。
この研究では、物語だけの条件で最もよい結果が見られ、歌だけの条件は最も低い結果でした(Albaladejo et al., 2018)。

一方、歌った方が、話すリズムで練習した場合より英語の文章を覚えやすかったとする子どもの研究もあります(Good et al., 2015)。

つまり、歌は役立つ可能性がありますが、覚えたい内容、歌の作り方、子どもの年齢、参加の仕方によって結果が変わります。

歌の価値を、覚えた単語数だけで決める必要はありません。

大人と声を合わせる、動きをまねる、好きなところだけ口ずさむなど、英語に参加しやすい場をつくること自体が、幼児期には大切な役割になります。

語りかけは、子どもの反応に英語を結び付ける

語りかけの特徴は、目の前の子どもの反応に合わせられることです。

子どもが犬を見て指をさしたときに「Dog」と言う。靴を履き終えたときに「Ready」と声をかける。
子どもが繰り返したら、大人も笑顔で返す。

このような短いやりとりでは、英語がその場の物、動作、気持ちと結び付きます。

多く話すことより、応じ合うことを見る

幼児期の言語入力を整理した研究レビューでは、ことばの質を、子どもに応じるやりとり、発達に合った分かりやすい表現、考えを少し広げる内容という三つの面から捉えています。

大切なのは、英単語を絶えず聞かせることではなく、子どもが参加できる形になっているかどうかです(Rowe & Snow, 2020)。

9~10か月の乳児に短期間、中国語を聞く機会を設けた実験では、対面で話者と関わった乳児には音の聞き分けの変化が見られましたが、録画や音声だけで同じ内容に触れた乳児には同じ変化が確認されませんでした(Kuhl et al., 2003)。

これは、すべての録音教材が役に立たないことを証明した研究ではありません。

特定の月齢、言語、実験条件で、ことばの音を学ぶ際に人とのやりとりが重要だったことを示しています。
音源を使う場合も、大人が一緒に歌う、子どもの動きをまねる、聞こえたことばを生活で使うなど、人とのやりとりへ戻すと意味を共有しやすくなります。

発音に自信がないときは、無理に英語だけで話さない

英語を母語としない大人の語りかけを調べた研究では、大人の英語力によって、子どもに向けた英語の語彙や文の豊かさに違いが見られました。

ただし、対象は米国で英語とスペイン語に触れて育つ2歳児の家庭です。
日本の家庭で短い英語を楽しむ場面へ、単純には当てはめられません(Hoff et al., 2020)。

それでも、「英語を増やすために、日本語なら豊かに話せる内容まで無理に英語へ置き換えなくてよい」という手がかりにはなります。
発音や表現が不安なら、音声付き絵本や歌で音の見本を確保し、大人は分かる短い表現を一緒に楽しむ方法があります。

家庭で普段使っている日本語で、子どもの気持ちや経験を十分に話すことも大切です。

二つの言語に触れること自体が子どもを混乱させるという根拠はありませんが、それぞれの言語でどれだけ、どのようなやりとりがあるかによって、育つ力の表れ方は変わります(Hoff & Core, 2013)。

発達と英語経験に合わせて、関わり方を変える

年齢は大まかな目安です。同じ年齢でも、英語を聞いてきた経験、絵本への関心、歌や身体を動かすことの好みは異なります。

0~2歳頃は、短いやりとりと繰り返しを中心にする

乳児期から2歳頃は、長い物語を理解することより、絵を見る、ページをめくる、声の調子を楽しむ、知っている物を見つけるといった関わりが中心になります。

一冊を読み切らず、子どもが見ている動物を指して短いことばを添えるだけでもかまいません。
歌も、最後まで静かに聞くことを求めず、揺れる、手を動かす、声を返すなど、その子なりの参加を受け止めます。

ことばより前の視線、声、身振りの育ちについては、0歳児の発達で詳しく説明しています。

3~4歳頃は、好きな物語や動作と結び付ける

物語の流れを追う姿が増えてきたら、繰り返しのある絵本や、絵から意味を考えやすい本を選べます。

「Where is the cat?」と尋ねて正解を求め続けるより、子どもが猫を見つけたら一緒に喜び、「Sleeping」と動作を添える方が、やりとりを続けやすい場合があります。

歌では、知っている動物、乗り物、食べ物、身体の動きなど、子どもの関心と結び付くものを選びます。
英語を正確に再現できるかより、意味を思い浮かべながら参加できるかを見ます。

5~6歳頃は、予想や比較を楽しめる

就学前には、物語の続きを予想する、登場人物の理由を考える、日本語と英語で似た表現や違う音を見つけるといった楽しみ方もできます。

ただし、分かった単語を毎回テストしたり、暗唱を求めたりすると、絵本や歌が評価される時間になることがあります。
子どもから言いたくなったことばを受け止め、大人も「この音、おもしろいね」と一緒に気付く関係を保ちます。

就学前の言葉、思考、遊びのつながりは、5~6歳児の発達も参考になります。

英語絵本・歌・語りかけを一つの流れにする

三つを別々の教材にせず、子どもの興味を中心にゆるやかにつなげる方法があります。

たとえば、動物の絵本で熊を見つけたら、熊が出てくる短い歌を一緒に歌い、その後の遊びで「Big bear」と声を添えます。
翌日は歌だけでも、絵本の好きなページだけでもかまいません。

大切なのは、毎日同じ量をこなすことではなく、子どもが意味を思い出せるつながりをつくることです。
絵本で絵とことばを結び、歌で音を繰り返し、語りかけで生活へ戻す。

この循環が、英語を覚える課題ではなく、共有できる遊びにします。

選ぶときは、対象年齢の表示だけでなく、子どもが絵や音に関心を示すか、繰り返しが分かりやすいか、大人が無理なく扱えるかを見ます。
人気作品でも子どもが興味を示さないことはあります。

反応が薄いときは、まだ早いと決めつけず、別の本や歌へ替える、しばらく休むという選択もできます。

よくある疑問

日本語で意味を説明すると、英語の学びを妨げますか

日本語を交えたら英語の意味がなくなる、という根拠はありません。
特に英語経験が少ない子どもには、絵、身振り、日本語での短い説明が、物語を共有する助けになります。

毎文を直訳する必要はありません。子どもが知りたいところだけ日本語で確かめ、繰り返しの英語はそのまま楽しむなど、理解と英語の音の両方を大切にできます。

歌や音声を聞き流すだけでもよいですか

英語の音が聞こえる機会にはなりますが、聞こえていることと、意味を理解して使えることは同じではありません。

子どもが好きな歌に気付き、一緒に身体を動かしたり、生活の中で同じ表現を使ったりすると、音と意味が結び付きやすくなります。

聞き流しを禁止する必要はありませんが、再生時間の長さを学びの量と考えないことが大切です。

親の発音が正しくないと、読まない方がよいですか

完璧な発音を目標にして、親子とも緊張する必要はありません。
一方、分からない読み方を推測し続けるより、出版社の音声や信頼できる朗読で確認できる方が安心です。

音声を手本にしながら一緒にページをめくり、子どもの指さしや表情には大人自身が応じるという役割分担もできます。

音の見本と、人とのやりとりは両立します。

子どもが英語を嫌がるときは、続けた方がよいですか

嫌がる理由は一つではありません。内容が難しい、今は別の遊びをしたい、同じものに飽きた、答えを求められるのが負担など、さまざまな可能性があります。

その場ではやめ、別の日に違う形で試すことができます。
英語に触れることより、子どもが自分の「今はやめたい」を受け止めてもらえることを優先してください。

研究を日本の家庭へ当てはめるときの注意点

この分野の研究には、英語圏で家庭の言語と園の言語が異なる子どもを対象としたものや、研究者が組み立てた幼児教育プログラムが多く含まれます。

日本語を中心に生活し、家庭で短時間英語に触れる子どもとは、英語の必要性も触れる量も異なります。

歌の研究も、年齢、学習期間、選んだ歌、教え方、評価方法がそろっていません。
英語絵本、歌、語りかけのどれが一番よいか、何歳から何分行えばよいかを一律に決められる段階ではありません。

文部科学省の幼稚園教育要領は、幼児期の教育を「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の五つの領域から整理しており、英語を独立した必修領域にはしていません。

英語に触れる活動も、幼児期の遊び、生活、安心できる関係を押しのけて行うものではありません。

英語絵本や歌を楽しむ時間があってもよく、ないから発達上の経験が不足するわけでもありません。
家庭や園の方針、子どもの関心、生活全体とのバランスから考えることが必要です。

まとめ

英語絵本は、絵や物語を手がかりに、聞こえたことばの意味を一緒に考える場をつくります。

歌は、音やリズム、繰り返しを楽しみながら、英語へ参加しやすくします。
語りかけは、子どもの視線や動作、気持ちに、その場で英語を結び付けます。

三つに共通するのは、英語を一方的に与えることより、子どもの反応を受け取り、意味を共有することです。

ただし、どの活動にも、将来の英語力を保証する働きは確認されていません。
歌の効果には研究上の不確かさがあり、共有読書の成果も、対象や方法によって異なります。

「何歳から、どれだけ行ったか」だけを成果にせず、子どもが何を見つけ、どの音を楽しみ、どのように人と伝え合おうとしているかを見ていくこと。

それが、幼児期の英語との出会いを、無理のない育ちの経験にする手がかりです。

参考文献一覧

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