積み木や自然素材で町を作りながら試し、話し合う幼児と、そばで見守る大人のクレヨン画

幼児教育・学び

幼児期の学びとは?遊び・生活・教育のつながりを研究から考える

「幼児期の学び」と聞くと、文字や数を覚えること、机に向かって課題に取り組むことを思い浮かべるかもしれません。

一方、園で夢中になって遊ぶ子どもの姿を見て、「遊んでいるだけで、きちんと学べているのだろうか」と感じることもあるでしょう。

幼児期の遊びと学びは、対立するものではありません。

子どもは、物に触れる、人のまねをする、何度も試す、違いに気づく、友達と相談する、うまくいかなければ方法を変えるといった経験を重ねながら、周囲の世界を理解していきます。

幼児期の教育とは、大人が答えを一方的に教えることだけではありません。子どもが自分から環境に関わり、考え、試せるように、物や場所、時間、人との関係を整えることも教育の重要な役割です。

この記事では、幼児期の学びを、遊び・生活・教育のつながりから考えます。


この記事で分かること

  • 幼児期の「学び」が何を意味するのか
  • 遊びが学びにつながる理由
  • 食事や着替えなど、日常生活に含まれる学び
  • 自由遊び、大人が支える遊び、直接的な説明の違い
  • 研究で分かっていることと、まだ十分に分かっていないこと
  • 幼児期の学びと小学校教育のつながり

幼児期の「学び」は、できることを増やすだけではない

学びは、知識や技能の量が増えることだけを指すものではありません。

初めて見る物へ手を伸ばす、二つの物を比べる、次に起こることを予想する、経験したことを遊びに取り入れる、自分の考えを人へ伝える。
このような変化も、幼児期の学びに含まれます。

子どもの身体、言葉、思考、感情、人間関係は、別々に育つわけではありません。
一つの活動の中で複数の働きが重なり、互いに影響しながら変化していきます。学びもまた、子どもと環境のやり取りの中で形づくられます。

この重なりを幼児教育の内容から読みとく視点が、「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の幼児教育の5領域です。

この前提となる発達の捉え方は、子どもの発達の基本的な考え方でも詳しく解説しています。

日本の幼稚園教育要領では、幼児期に育みたいものを、次の三つの柱から捉えています。

  • 豊かな体験を通して育つ「知識及び技能の基礎」
  • 気づいたことを使って考え、試し、工夫し、表現する「思考力、判断力、表現力等の基礎」
  • 心情、意欲、態度が育つ中で形成される「学びに向かう力、人間性等」

これらは、教科のように分けて教え込み、一つずつ習得を確認するものではありません。
遊びや生活を含む活動全体を通して、一体的に育まれるものです。

0~2歳頃にも、学びはすでに始まっています。

乳児が大人の声へ顔を向ける、物を落として変化を確かめる、手を伸ばして距離を知る、同じ遊びを繰り返すといった行動には、感覚、運動、記憶、人との関係が重なっています。

幼児期の学びを考えるときは、「何を覚えたか」だけでなく、子どもが何に気づき、何を試し、以前とは違う方法を使うようになったかを見る必要があります。

遊びが学びにつながるのはなぜ?

子ども自身の目的がある

遊びには、子ども自身の「やってみたい」「もう一度試したい」「こうしたらどうなるだろう」という目的があります。

積み木で高い塔を作っている子どもは、大人から「高さやバランスを学びましょう」と言われて取り組んでいるわけではありません。
それでも、積み木を置く位置によって崩れ方が変わることに気づき、土台を広げ、別の積み方を試します。

友達と町を作る遊びなら、作りたいものを言葉で伝え、材料を分け、考えの違いに気づき、途中で計画を変えることもあります。

一つの遊びの中に、身体の操作、物の性質への気づき、見通し、言葉、感情の調整、人との関係が含まれているのです。

遊びの中で、子どもの目的、環境からの反応、試し直し、人とのやり取りがどのように学びへつながるかは、「遊び」と「学び」のつながりで詳しく解説しています。

繰り返しながら方法を変えられる

子どもの遊びには、同じことの繰り返しがよく見られます。

大人から見ると同じ遊びに見えても、子どもは力の入れ方、物の置き方、相手への伝え方などを少しずつ変えている場合があります。

失敗しても、遊びの中なら、元へ戻ったり、別の方法を試したりできます。この繰り返しによって、子どもは結果だけでなく、「どうすれば変わるか」という関係を確かめていきます。

遊びの中で使われる「覚えておく・いったん止める・方法を変える」といった働きは実行機能とも関わります。詳しくは、「実行機能とは?考える・待つ・切り替える力の育ち」で整理しています。

人とのやり取りで考えが広がる

遊びは、一人で集中して取り組む場合にも、友達や大人と関わりながら進む場合にも意味があります。

他の子どもの作り方を見る、自分とは違う考えを知る、役割を相談する、道具を貸し借りする。こうしたやり取りによって、子どもは自分だけでは思いつかなかった方法へ出会います。

ただし、いつも友達と一緒に遊ぶことが、学びの条件ではありません。
一人で観察したり、試したりする時間も、子どもにとって大切です。

こども家庭庁のはじめの100か月の育ちビジョンは、遊びを何らかの効果を得るためだけに行わせるものではなく、子どもが主体的に興味をもち、夢中になって心と身体を動かす行為として捉えています。

そのため、「この遊びをすればこの力が伸びる」と、大人の目的だけで遊びを管理しすぎないことも重要です。

食事や着替えなど、生活の中にも学びがある

幼児期の学びは、遊びの時間だけに起こるものではありません。

食事、着替え、手洗い、片付け、散歩、買い物、家事の手伝いなど、日常生活にも多くの気づきや試行錯誤があります。

たとえば、自分で服を着ようとするときには、服の前後を見分け、身体の動かし方を調整し、難しい部分では大人へ助けを求めます。

食事の準備を手伝うときには、物の数や大きさを比べ、順序を覚え、相手の分も考えます。片付けでは、物の特徴に応じて置き場所を分けたり、次に使う人を意識したりすることがあります。

こうした経験は、「生活習慣を身につけること」と「考えること」が別々ではないことを示しています。

保育所保育指針が生活場面を養護と教育の両方から捉える理由は、「養護と教育」の一体性を解説した記事で詳しく整理しています。

保育所保育指針も、子どもが自発的・意欲的に環境へ関わり、生活や遊びを通して総合的に経験することを重視しています。

ただし、日常のすべてを教材に変える必要はありません。

子どもが集中しているときに質問を重ねたり、正しい方法をすぐに示したりすると、子ども自身が考える流れを止めてしまうことがあります。
大人が学ばせようと急ぐより、何をしようとしているのかを見て、必要なときに言葉や手助けを加える方がよい場合もあります。

幼児期の教育は「教え込むこと」だけではない

幼児教育では、「環境を通して行う教育」という考え方が重視されています。

ここでいう環境には、おもちゃや教材だけでなく、部屋や園庭の配置、自然、地域、友達、保護者、保育者、使える時間なども含まれます。

環境を通して行う教育は、子どもを自由に遊ばせて、大人は何もしないという意味ではありません。

大人は、子どもの興味や発達を考えて物や場所を整え、活動を観察し、必要に応じて材料を加えたり、言葉を添えたりします。
子どもの考えを代わりに決めるのではなく、子どもが次の一歩を見つけられるように支えます。

たとえば、作った物が倒れたとき、大人がすぐに直すのではなく、「下の積み木が動いたね」と気づいたことを言葉にすることがあります。「どうしたら倒れにくくなるかな」と問いかける場合もあれば、子どもが黙って試しているなら、そのまま見守ることもあります。

大切なのは、いつも同じ方法で関わることではなく、その子の様子と場面に応じて支え方を変えることです。

自由遊び、大人が支える遊び、直接的な説明

遊びと教育は、「自由に遊ばせるか、大人が教えるか」という二択ではありません。

子どもが内容も進め方も選ぶ自由遊びがあります。子どもの選択を保ちながら、大人が環境、問いかけ、ヒント、見本などで支える「ガイドされた遊び」もあります。

また、安全な道具の使い方、新しい言葉の意味、集団で共有する約束などは、大人が明確に説明した方がよい場合があります。

直接説明すること自体が、幼児期にふさわしくないわけではありません。
問題になるのは、大人がすべての手順や答えを決め、子どもが考えたり選んだりする余地を失わせることです。

大人の意図と子どもの主体性のどちらか一方だけを選ぶのではなく、活動の目的、子どもの関心、必要な安全、困り方に応じて組み合わせることが大切です。

英語に触れる活動も同じで、開始年齢だけでなく、遊びと対話を保ちながら続けられる条件が重要です。
早期英語教育を始める年齢を研究から整理しましたので、参考にしてください。

研究は遊びの効果をどこまで示している?

遊びを基盤とする教育については、研究でも定義が統一されているわけではありません。

Pyle、DeLuca、Dannielsが4~5歳を中心とする168本の研究を整理したスコーピングレビューでは、遊びを通した教育には、自由遊びから教師がより強く関わる活動まで幅があり、大人の役割についても見解や実践が異なることが示されています。Pyle et al.(2017)

Skeneらによるシステマティックレビューでは、1~8歳を対象とした39研究が検討され、そのうち17研究、合計3,893人のデータがメタ分析に用いられました。

ガイドされた遊びは、直接的な指導と比べ、初期の数学、図形の理解、課題の切り替えの一部で良好な結果を示しました。
自由遊びとの比較では、空間に関する語彙で良好な結果が報告されています。

一方、読み書きや社会・感情面を含む他の主要な結果では、明確な違いが確認されませんでした。
研究ごとにガイドされた遊びの定義や実施方法が異なり、効果が主に小規模研究で見られた点にも注意が必要です。Skene et al.(2022)

4~5歳児70人を対象に図形学習を比較したFisherらの研究でも、ガイドされた遊びに参加した子どもが、自由遊びや直接的な説明を受けた子どもより、図形の特徴を捉える課題で良好な結果を示しました。Fisher et al.(2013)

ただし、これは特定の年齢、課題、短期間の研究です。
「ガイドされた遊びなら、どの年齢でも、どの学びでも最も効果が高い」と一般化することはできません。

ごっこ遊びに関するLillardらのレビューも、ごっこ遊びと発達上のさまざまな力との関連は報告されているものの、ごっこ遊びだけがその力を生み出すという強い因果関係は十分に確認されていないと指摘しています。Lillard et al.(2013)

研究からは、遊びが豊かな学びの場になり得ることは示されています。
しかし、特定の遊びをさせれば、決まった能力が必ず伸びるとはいえません。

また、研究の多くは日本以外で行われ、対象も3~6歳頃へ偏っています。
生活文化、園の制度、集団の大きさ、大人と子どもの関係が異なるため、海外研究の結果を日本のすべての子どもへそのまま当てはめることはできません。

子どもの学びを見るときの手がかり

子どもの学びは、完成した作品や正解の数だけに表れるものではありません。

子どもの姿を見るときは、次のような過程が手がかりになります。

  • 子どもは何をしようとしていたか
  • どのような方法を試していたか
  • 以前と比べて、試し方や伝え方がどう変わったか
  • 物や人からどのような反応を受け取っていたか
  • うまくいかないとき、続けたのか、方法を変えたのか、助けを求めたのか
  • 大人の支えによって、自分で考えられる範囲が広がったか
  • 大人の関わりが、子どもの考えを置き換えていなかったか

同じ活動をしても、子どもによって注目することは異なります。

積み木遊びで高さへ関心を向ける子どももいれば、色や形を並べる子ども、物語を作る子ども、友達とのやり取りを楽しむ子どももいます。

どの学びが現れるかは、年齢だけでなく、その子の関心、経験、感覚、相手、場所、心身の状態によって変わります。
一つの場面だけを見て、「学べている」「学べていない」と判定しないことが大切です。

幼児期の学びは小学校教育へどうつながる?

幼児期の学びと小学校の学習は、同じ形ではありません。

幼児期には、遊びや生活の中で複数の力が一体となって働きます。
小学校では、その経験を基盤にしながら、教科などを通して内容を系統的に学ぶ場面が増えていきます。

店を作る遊びで看板を書くことは、文字の役割への気づきにつながります。

材料の数を確かめることは、数量を生活の必要から使う経験になります。
(文字や数への関心が生活や遊びの中でどのように育つかは、「幼児期の文字・数への関心をどう育てる?」で詳しく解説しています)

友達とルールを作ることは、自分の考えを伝え、相手の立場を知り、共通の目的へ向かう経験になります。

ただし、こうした遊びを小学校の教科学習へ単純に置き換えることはできません。
「この遊びは算数」「この活動は国語」と、大人が学びを細かく分断する必要もありません。

文部科学省の幼児教育と小学校教育の接続資料も、幼児期の遊びを通した学びと、小学校の各教科等とのつながりを示しています。
これは、幼児期から教科内容を先取りするという意味ではなく、幼児期に育まれた経験や学び方を、小学校が受け取り発展させるという考え方です。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」も、卒園時の合否を決めるチェックリストではありません。

就学前の育ちをどう捉えるかは、5~6歳児の発達と就学前に育つ力で詳しく解説しています。

また、この位置づけを含め、次期改訂で検討されている「遊びの深まり」や幼保小接続の変更点は、次期学習指導要領で幼児教育はどう変わる?で整理しています。

関連記事
教育アプリは幼児の文字・数の学びに役立つ?研究から考える

まとめ

幼児期の学びは、文字や数を早く覚えることだけではありません。

子どもは、遊びや生活の中で人、物、自然に働きかけ、反応を受け取り、何度も試しながら、自分と周囲の世界について理解していきます。
身体、言葉、思考、感情、人間関係は、一つの経験の中で重なりながら育ちます。

大人の役割は、すべてを教えることでも、何もせず見ていることでもありません。
子どもが安心して関わり、考え、試せる環境を整え、必要なときに言葉や材料、方法を示すことです。

遊びを能力獲得の手段だけに変えず、子どもが今その遊びを楽しみ、自分の思いを発揮していること自体も大切にする必要があります。

「何ができたか」だけでなく、「何に気づき、どう試し、誰と関わり、どのように考えを変えたか」を見ること。
それが、幼児期の学びを読みとく手がかりになります。

参考文献一覧

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