「いつも一人で遊んでいる」「おもちゃを貸せない」「友達とのけんかが多い」
そんな姿を見ると、社会性が育っていないのではないかと心配になることがあります。
けれども、子どもの社会性は、友達の人数や集団行動の上手さだけで判断できるものではありません。
安心できる大人と気持ちを通わせること、自分の思いを表すこと、相手の存在に気づくこと、遊びやルールを共有することなど、いくつもの力が重なりながら育っていきます。
この記事では、0歳から6歳までに見られる社会性の育ちを、研究と公的資料をもとに整理します。
年齢はあくまでおおまかな目安です。
「何歳なら、これができるはず」という合否表ではなく、今の子どもがどのように人と関わろうとしているかを読みとく手がかりとしてご覧ください。
この記事で分かること
- 乳幼児期の「社会性」が意味するもの
- 0歳から6歳までに見られる人との関わりの変化
- 一人遊びや並行遊びを心配しすぎなくてよい理由
- 社会性の研究で分かっていることと、まだ分からないこと
- 子どもの姿を見るときの手がかりと、大人にできる支え方
子どもの社会性とは、集団に合わせる力だけではない
社会性という言葉から、「友達と仲良く遊べる」「順番やルールを守れる」「集団で同じ行動ができる」といった姿を思い浮かべる人は多いでしょう。
これらも社会性の一部ですが、それだけではありません。
社会的能力についての理論研究では、社会性を一つの技術としてではなく、本人の思いや目的、相手との関係、その場の状況などが関わる多面的なものとして捉えています。
ある場面では積極的に関われる子どもが、初めての場所では静かに周囲を見ていることもあります。
大人数では話しにくくても、安心できる相手とは豊かにやりとりできる子どももいます。
大切なのは、友達の多さや参加の早さだけを見るのではなく、子どもが人に関心を向けているか、どのような方法で思いを伝えているか、安心できる関係の中でどんな姿を見せているかを含めて考えることです。
0~1歳ごろ|安心できる大人とのやりとりが始まる
社会性の土台は、友達と遊び始めてから突然できるものではありません。
乳児期から、身近な大人とのやりとりを通して育ち始めます。
赤ちゃんは、顔を見る、声に反応する、表情や声を返す、抱かれると落ち着くなど、体全体を使って人と関わります。
大人が泣き声や視線、表情を受け止めて応じることで、赤ちゃんは「自分の働きかけに相手が応えてくれる」という経験を重ねます。
こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」や「保育所保育指針解説」でも、特定の大人との安心できる関係を基盤として、周囲の人やものへ関心を広げていくことが重視されています。
同じものに注意を向ける「共同注意」
1歳に近づくころには、大人が見ているものを目で追う、大人の指さした方向を見る、自分が見つけたものを指さして伝えようとするなど、「相手と同じものに注意を向ける」姿が見られるようになります。
これは共同注意と呼ばれ、言葉や人とのやりとりにも関わる大切な変化です。
9~15か月の乳児24人を毎月追った研究では、他者と注意を共有する、視線や指さしを追う、他者の注意を導くといった行動が、この時期に関連しながら現れる様子が報告されました。
ただし、少人数を対象とした研究であり、特定の月齢までに現れることを示す発達基準ではありません。
視線、声、表情、身ぶりの使い方には個人差があります。
一つの行動だけで社会性を判断するのではなく、日々のやりとり全体を見ることが必要です。
1~2歳ごろ|まねる、伝える、助けようとする
歩ける範囲や使える言葉が増えると、子どもは自分から人に近づいたり、相手の行動をまねたりするようになります。
大人が物を使う様子を再現する、知っている身ぶりを使う、相手の表情を見ながら行動を変えることも、人への関心の表れです。
18か月児を対象とした実験では、大人が手の届かない物を取ろうとしているときなどに、その目的を理解して助ける行動が報告されています。
幼い子どもにも、相手の目的に気づき、手助けしようとする姿が見られるという結果です。
一方、同じ年齢の子ども同士が一つの課題に取り組んだ研究では、12か月や18か月のペアよりも、24か月や30か月のペアで行動を調整して協力する姿が多く見られました。
ただし、これらは設定された課題での結果です。日常生活全体の「社会性」をそのまま測ったものではありません。
また、助ける、物を分ける、悲しむ相手を慰めるといった行動は、すべて同じ一つの能力から生じるとは限りません。
それぞれに必要な理解や動機が異なり、同じ速さで育つとも限らないことが研究で指摘されています。
2~3歳ごろ|「自分で」「自分の」が強くなり、ぶつかり合いも増える
2歳ごろになると、自分のしたいことや使いたい物がはっきりしてきます。
「自分でやりたい」「まだ使いたい」という思いが強くなる一方で、相手の希望を理解し、自分の行動を調整する力は育っている途中です。
そのため、おもちゃを取る、貸せない、順番を待てない、押す、泣くといった衝突が増えることがあります。
これは社会性がないからというより、自分の意思をもつようになり、それを人との関係の中でどう表すかを学び始めた姿と考えられます。
近くで同じように遊ぶことも、人への関心の表れ
この時期には、ほかの子どもの近くで、似たおもちゃを使いながら別々に遊ぶ「並行遊び」がよく見られます。
会話や役割分担が少なくても、相手の動きを見て同じ遊びを始めたり、使い方をまねたりすることがあります。
一緒に遊んでいないように見えても、子どもは周囲の子どもから多くの情報を受け取っています。
大人が早く共同遊びへ進ませようとするより、それぞれが安心して遊べる物や空間を用意することが、関わりの土台になります。
3~4歳ごろ|イメージや役割を共有する遊びが広がる
言葉と想像力が育つと、「お店の人」「お客さん」「赤ちゃん」などの役になり、共通のイメージをもって遊ぶ姿が増えてきます。
ごっこ遊びでは、自分のしたいことを伝えるだけでなく、相手の提案を聞く、役割を調整する、遊びの流れをつなぐことが必要になります。
ただし、同じ場面を思い描いているつもりでも、子ども同士のイメージが一致するとは限りません。
「私はこうしたかった」「その役は自分がしたい」とぶつかることもあります。
こうした対立は、遊びの失敗ではありません。
遊びの中で、試したり、相手と考えを調整したりする過程が学びへどうつながるかは、遊びと学びの関係で詳しく解説しています。
自分と相手の思いが異なることに気づき、関係を調整する経験にもなります。
大人はすぐに正解を決めるのではなく、「あなたは続きを作りたかったんだね」「こちらの子は、この役をやってみたかったんだね」と双方の思いを言葉にすると、子どもが状況を捉え直しやすくなります。
4~6歳ごろ|共通の目的やルールを意識する
4歳以降は、友達と相談して遊び方を決める、共通の目的に向かって作る、簡単なルールを共有するといった姿が増えてきます。
相手の発言や行動から気持ちを推測し、自分の考えと相手の考えが違うことにも少しずつ気づくようになります。
他者が自分とは異なる考えをもつことへの理解を調べる方法の一つに、誤信念課題があります。
多くの研究をまとめた分析では、幼児期を通して課題の成績が変化することが示されていますが、結果は質問の仕方や課題の内容、研究が行われた国などにも影響されます。
日本の研究をまとめた小規模な分析では、課題の成績が偶然水準を上回る目安は約64か月でした。
しかし、これは「5歳なら相手の気持ちが分かる」という境界線ではありません。
誤信念課題は、共感、思いやり、友達との関係を含む社会性全体を測るものでもありません。
ルールを知っていても、いつも守れるとは限らない
子どもがルールを説明できることと、強い感情の中で実際に行動を止めたり譲ったりできることは別です。
「順番だと分かっているのに待てない」「貸したほうがよいと知っているのに手放せない」という姿は、理解がないとは限りません。
社会性を考えるときは、ルールの理解だけでなく、感情を整える力、言葉で伝える力、相手との関係、その場の疲れや見通しなども含めて見る必要があります。
一人遊び・並行遊び・共同遊びは、一方向の階段ではない
子どもの遊びは、一人遊び、並行遊び、ほかの子どもと関わる遊び、協同的な遊びなどに分類されてきました。
この分類は、遊びの姿を整理する手がかりとして現在も使われています。
一方で、現代の研究では、これらを固定的な年齢段階として捉えることへの注意も示されています。
年齢が上がって共同遊びが増えても、一人で集中して遊ぶ時間はなくなりません。
友達と遊ぶ力がある子どもでも、疲れているときや新しい環境では、周囲を見たり一人で遊んだりすることがあります。
したがって、「一人遊びをしているから社会性が低い」「共同遊びができるほど発達が上」と単純に並べることはできません。
遊び方だけでなく、子どもがその遊びを選んでいるのか、安心して過ごしているか、周囲へどのように関心を向けているかを見ることが大切です。
研究から分かっていることと、まだ分からないこと
ごっこ遊びと社会性には関連があるが、因果関係は確定していない
2024年に公表されたメタ分析では、3~8歳を対象とした34研究をまとめた結果、ごっこ遊びと社会的能力の間に、小さいながら正の関連が示されました。
ただし、多くは同じ時点で両者を調べた研究でした。
ごっこ遊びが社会性を育てたのか、もともと人と関わりやすい子どもが複雑なごっこ遊びへ参加しやすいのかは、十分に分かっていません。
研究の多くが欧米などの地域で行われており、日本の子どもへそのまま当てはめられるとも限りません。
社会的な行動の表れ方には文化や状況も関わる
6つの社会で子どもと成人を調べた研究では、他者のために自分の利益を減らすような選択の表れ方が、成長とともに各社会の大人の傾向へ近づくことが示されました。
文化や、その社会で共有される規範が、協力行動の表れ方に関係する可能性を示す結果です。
ただし、対象は3~14歳の子どもと成人であり、0~2歳や日本の乳幼児を直接調べた研究ではありません。
また、実験課題での選択が、日常の思いやりや友達関係をすべて表すわけでもありません。
子どもの社会性を見るときの5つの手がかり
社会性を見るときは、「友達と遊べたか」という一場面だけでなく、次のような点を組み合わせて考えます。
- 安心できる相手との関係
家族や保育者など、安心できる大人とはどのようなやりとりをしているでしょうか。 - 人への関心の向け方
自分から近づくだけでなく、見ている、まねる、近くで同じ遊びをすることも関心の表れです。 - 言葉以外の伝え方
視線、表情、声、指さし、物を持ってくるなど、子どもはさまざまな方法で思いを伝えます。 - 場面による違い
家庭、園、初めての場所、少人数、大人数では姿が変わることがあります。 - 時間の中での変化
一回の成功や失敗より、数週間、数か月の中で関わり方がどう変わっているかを見ます。
人への反応がほとんど見られない状態が続く、複数の場面で本人が強く困っている、生活全体への影響が大きいと感じる場合は、一つの行動だけで判断せず、地域の子育て相談、園の担当者、かかりつけの小児科などへ相談する方法もあります。
この記事だけで発達や診断を判断することはできません。
社会性を支えるために大人ができること
安心して戻れる関係をつくる
子どもは、安心できる大人との関係を足場にして、ほかの人や新しい場所へ関心を広げていきます。
まずは子どもの視線や言葉、身ぶりを受け止め、「伝わった」と感じられるやりとりを重ねます。
一人遊びも、近くで遊ぶ時間も認める
無理に友達の輪へ入れる必要はありません。一人で遊ぶ、周囲を見る、同じ空間で別々に遊ぶことも、その子どもに必要な経験です。
参加を促すときも、「一緒にやりなさい」ではなく、「見ていたい?」「同じ積み木をここで使う?」など、選べる形にします。
双方の思いを短い言葉にする
衝突したときは、正しさを急いで決める前に、「まだ使いたかった」「こちらの子も使ってみたかった」と双方の思いを言葉にします。
相手の気持ちを無理に言わせたり、すぐに謝らせたりするより、何が起きたかを理解できるよう支えることが先です。
順番や終わりを見えるようにする
「少し待って」だけでは見通しをもちにくい子どもには、順番カード、砂時計、次に使う人が分かる印などが役立ちます。
これは社会性を教え込むというより、分かっていることを行動に移しやすくする環境の工夫です。
けんかをゼロにすることを目標にしない
安全を守ることは必要ですが、意見の違いや行き違いをすべて大人が取り除く必要はありません。
子どもは、ぶつかり合いの中で、自分の思いを伝える方法や、相手と折り合う方法を学びます。
大人は危険を止め、必要な言葉や選択肢を補いながら、子どもが関係を立て直す過程を支えます。
まとめ|社会性は、人と関わる経験の中で少しずつ育つ
子どもの社会性は、友達の人数や集団行動の上手さだけで測れるものではありません。
乳児期の大人とのやりとりから始まり、相手と注意を共有する、自分の思いを表す、近くで遊ぶ、イメージやルールを共有するといった経験が重なっていきます。
一人遊び、並行遊び、共同遊びは、どれか一つが優れているのではありません。
子どもは状況や気持ちに応じて行き来します。
貸せない、待てない、けんかになるといった姿も、自分と相手の思いを調整する力が育っている途中に見られます。
「できた・できない」だけで判断せず、子どもがどのように人へ関心を向け、何を伝えようとしているのかを見ていくこと。
それが、社会性の育ちを読みとく出発点になります。
関連記事
参考文献・公的資料
- こども家庭庁(2023)「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」
- 厚生労働省(2018)『保育所保育指針解説』(こども家庭庁掲載)
- 文部科学省(2018)『幼稚園教育要領解説』
- Rose-Krasnor, L.(1997)The Nature of Social Competence: A Theoretical Review.
- Carpenter, M., Nagell, K., & Tomasello, M.(1998)Social Cognition, Joint Attention, and Communicative Competence from 9 to 15 Months of Age.
- Brownell, C. A., & Carriger, M. S.(1990)Changes in Cooperation and Self-Other Differentiation during the Second Year.
- Warneken, F., & Tomasello, M.(2006)Altruistic Helping in Human Infants and Young Chimpanzees.
- Paulus, M.(2018)The Multidimensional Nature of Early Prosocial Behavior: A Motivational Perspective.
- Wellman, H. M., Cross, D., & Watson, J.(2001)Meta-Analysis of Theory-of-Mind Development: The Truth about False Belief.
- Ohtsubo, Y.(2007)Japanese Children's Development of False Belief Understanding.
- House, B. R. et al.(2013)Ontogeny of Prosocial Behavior across Diverse Societies.
- Xu, Y.(2010)Children's Social Play Sequence: Parten's Classic Theory Revisited.
- Smits-van der Nat, M., van der Wilt, F., Meeter, M., & van der Veen, C.(2024)The Value of Pretend Play for Social Competence in Early Childhood: A Meta-analysis.