夕方の部屋でカーテンを開き、木の枝と壁の影を見比べる4歳ごろの子どものクレヨン画

感情・行動

子どもの怖がりは心配?不安や恐怖の発達

暗い部屋に入りたがらない、虫を見ると泣く、病院の前で動けなくなる。

昨日までは平気だったものを、急に怖がることもあります。

そんな姿を見ると、「怖がりすぎではないか」「対応の仕方が悪かったのでは」と心配になるかもしれません。
しかし、怖さは危険を避け、安全を確かめるために備わった反応です。

怖がること自体が、弱さや発達上の問題を意味するわけではありません。

大切なのは、何を怖がったかだけでなく、怖さの強さや続き方、落ち着くまでの様子、生活への影響を一緒に見ることです。

この記事では、1~6歳ごろの不安や恐怖の発達を、日本と海外の研究をもとに読みときます。


この記事で分かること

  • 恐怖と不安の違い
  • 子どもが怖がるものが発達とともに変わる理由
  • 1~6歳ごろに見られやすい怖さ
  • 子どもが怖がったときの関わり方
  • 相談を考えるときに確認したいこと

恐怖と不安は子どもを守る反応

恐怖は、目の前にある具体的な危険や対象に対する反応です。
たとえば、大きな犬が近づいてきたときに後ずさりする、突然の大きな音に体を固くするといった反応が当てはまります。

不安は、まだ起きていないことや、はっきりしない危険を予測したときにも生じます。
「病院で痛いことをされるかもしれない」「失敗して笑われるかもしれない」と考えるときの気持ちです。

ただし、幼い子どもでは、恐怖と不安を明確に分けることはできません。
本人が理由を言葉にできない場合も多く、行動や体の反応として表れることがあります。

正常な恐怖の発達をまとめたGulloneのレビューは、怖さが危険を避けるという適応的な役割を持ち、その対象が認知や社会性の発達とともに変化することを示しています。

「怖がらないこと」だけを成長の目標にする必要はありません。
怖いときに安全な人へ近づく、距離を取る、様子を確かめることも、自分を守る力の一部です。

怖がるものが発達とともに変わる理由

想像し、記憶し、先を予測する力が育つ

子どもは、成長に伴って、目の前にないものを思い浮かべたり、過去の経験を覚えて次の出来事を予測したりするようになります。

この力は遊びや学びを豊かにする一方、「暗いところに何かいるかもしれない」「前に痛かったから、今度も痛いかもしれない」と考えることにもつながります。

想像力が育ったために怖さが生まれることもあります。
怖がる姿だけを見て、心が弱くなったと判断することはできません。

慎重に様子を見る気質には個人差がある

初めての人や場所を前に、すぐ近づく子もいれば、しばらく観察してから動く子もいます。
このような新しい状況への慎重さは、気質の個人差として乳幼児期から見られます。

日本では、3~5歳の子どもを対象にした行動抑制尺度の研究が行われ、保護者・保育者の評価と行動観察を用いて、慎重な反応の測定方法が検討されています。

海外の前向き研究を統合したメタ分析では、幼少期の強い行動抑制と後の不安との間に関連が報告されています。
ただし、これは慎重な子どもが必ず強い不安を抱えるという意味ではありません。

気質だけで将来を予測することはできず、経験や周囲の支えなど、さまざまな要因が関係します。

経験や周囲から得た情報も影響する

実際に怖い思いをした経験だけでなく、ほかの人が怖がる姿を見たり、危険を強調した話を聞いたりすることも、子どもの予測に影響します。

言葉による危険情報と子どもの恐怖を検討したMurisとFieldのレビューでは、否定的な情報が恐怖や回避に関係し得ることが整理されています。

ただし、特定の一言や保護者の関わりだけを原因と決めることはできません。
同じ説明を聞いても反応は子どもによって異なり、体調、過去の経験、その場の環境なども重なります。

1~6歳で見られやすい怖さ

年齢ごとの怖さには大まかな傾向がありますが、「この年齢なら必ず怖がる」「この年齢までに平気になる」という境界線ではありません。

同じ子どもでも、疲れている日や生活環境が変わった時期には、以前より強く怖がることがあります。

1~2歳ごろは、見慣れないものや離れる場面への反応が表れやすい

1~2歳ごろは、見慣れない人や場所、突然の音、足元の不安定さなどに対して、泣く、固まる、抱っこを求めるといった反応が見られます。

状況を言葉で理解することがまだ難しいため、体の反応が先に表れることもあります。
安心できる大人に近づくことで落ち着こうとする姿も自然です。

人と離れる場面での不安については、子どもの母子分離不安はなぜ起こる?で詳しく説明しています。

3~4歳ごろは、想像したものも怖さの対象になる

言葉やごっこ遊びが豊かになると、暗闇、影、物語の登場人物、見慣れない生き物など、実際には目の前にないものも想像できるようになります。

たとえば、カーテンの影を何かの姿だと思ったり、物語で聞いた存在が自分の部屋にも来ると考えたりすることがあります。
これは、想像と現実を行き来しながら理解を深めている途中の姿でもあります。

この時期の認知や想像力の変化は、3歳児の言葉・想像力の発達でも扱っています。

また、「やってみたいけれど失敗したくない」という気持ちも生まれます。
挑戦したい気持ちと怖さが同時に見られる背景は、4歳児の感情と社会性も参考になります。

5~6歳ごろは、失敗や評価、これから起きることへの不安も増える

5~6歳ごろになると、けがや病気だけでなく、失敗すること、友達にどう思われるか、初めての活動で何が起きるかなど、先の出来事を考えて不安になることがあります。

一方で、安全な場所から少し怖い物語や映像を見たがることもあります。

日本の幼児を対象にした富田の研究では、年長児ほど「怖いものを見てみたい」という選択が見られ、その選択と空想・現実の区別との関連が検討されました。

怖いものを避ける姿と、怖いけれど確かめたい姿は、矛盾しているとは限りません。
安全を確かめながら世界を理解しようとする過程として、両方が見られることがあります。

怖さは言葉以外にも表れる

幼い子どもは、「何が」「どのくらい」「なぜ」怖いのかを、いつも言葉で説明できるわけではありません。

大人にしがみつく、動かなくなる、隠れる、その場所へ行くことを拒む、急に泣くといった姿で表れることがあります。
怖さが強いと、怒る、大声を出す、物を押しのけるなど、一見すると反抗や癇癪に見える場合もあります。

怒りのように見える行動の内側に不安が重なっている可能性については、子どもの癇癪はなぜ起こる?で詳しく説明しています。

CDCの解説では、子どもの強い不安が、いら立ちや怒り、睡眠の問題、頭痛や腹痛などの身体症状として表れる場合があるとされています。

ただし、一つの行動だけで不安の強さや原因を決めることはできません。
怖がる前に何があったか、どのくらいで落ち着いたか、落ち着いた後にいつもの遊びへ戻れたかを続けて見ることが大切です。

日本と海外の研究から分かっていること

日本の3~6歳児90人に、不安を感じる場面の絵を見せて尋ねた鹿島の研究では、年齢が上がるにつれて不安の認知が少なくなり、対処方法の理解が高まる傾向が示されました。

ただし、変化の仕方は場面によって異なりました。

この研究は、子どもの不安と対処が一様に変化するのではないことを示す資料です。
一方、対象人数が限られた横断研究であり、現在のすべての子どもへそのまま当てはめることはできません。

また、3~6歳児551人について保護者が回答した西澤・濱口の研究では、幼児の不安傾向を、社会的な不安、分離に関する不安、特定の対象への恐怖、幅広い不安など複数の側面から捉える尺度が検討されました。

これは「怖がり」を一つの性格としてまとめるのではなく、どのような場面で不安が表れるかを分けて考える必要性を示しています。

ただし、この尺度は診断や有病率の判定を目的としたものではありません。

海外研究を含む多くの研究には、保護者の回答を中心とするもの、ある時点だけを調べたもの、欧米の文化や生活環境で行われたものが含まれます。
年齢別の傾向を日本の子どもの合否判定や発達チェックリストとして使うことはできません。

子どもが怖がるときに大人ができること

まず、怖かった気持ちを受け止める

「そんなの怖くない」「赤ちゃんみたい」と否定されると、子どもは怖さに加えて、分かってもらえないつらさを抱えることがあります。

最初は「怖かったね」「びっくりしたね」と、今起きている気持ちを短く言葉にします。
怖いという判断に同意するというより、「あなたが怖いと感じたことに気づいている」と伝える関わりです。

何が怖いのかを少しずつ確かめる

子どもが話せそうなら、「音が怖かった?」「近くに来たのが怖かった?」など、答えやすい形で確かめます。

同じ「犬が怖い」でも、吠える音、急に動くこと、近づかれることでは、必要な助けが異なります。
ただし、繰り返し理由を尋ねると負担になることもあるため、答えられないときは急がせません。

これから起きることを、分かる範囲で伝える

見通しが立たないことは、不安を強めやすいものです。「大きな音が一回するよ」「終わったら一緒に帰るよ」のように、何が起き、どのくらい続き、その後どうなるかを年齢に合わせて伝えます。

医療場面について、国立成育医療研究センターも、年齢に応じて事前に説明すること、子どもの気持ちを認めること、注射を脅しに使わないことを案内しています。

医療以外の場面でも、「怖がらせて従わせる」のではなく、正確で短い説明をするという考え方は参考になります。

子どもが選べる部分を残す

安全を守れる範囲で、「少し離れて見る」「手をつなぐ」「今日は入口までにする」など、子どもが選べる部分をつくります。

自分で距離や方法を選べると、ただ我慢させられる場合よりも、安全を確かめやすくなります。
怖さが強い最中には、新しい説明をたくさん加えるより、まず安全な距離へ移動して落ち着くことを優先します。

小さな段階を、子どものペースで進む

怖い対象へ急に近づけたり、逃げられない状態にしたりすると、怖さが強まることがあります。
一方、日常のすべてを怖さに合わせて避け続けると、経験できる範囲が狭くなる場合もあります。

まず遠くから見る、絵や本で確かめる、信頼できる大人と短時間近づくなど、子どもが落ち着きを保てる小さな段階を考えます。

NHSの保護者向け解説も、子どもの話を聞き、気持ちを退けず、一緒に解決方法を考えることを勧めています。

これは家庭で治療を行うという意味ではありません。
強い苦痛が見られるときは無理に続けず、環境や進め方を見直します。

家庭と園で、落ち着きやすかった方法を共有する

怖がった場面だけでなく、何をすると落ち着けたかも記録すると、次の関わりに生かしやすくなります。

家庭と園で、「突然の音があると固まりやすい」「先に予定を伝えると参加できた」など、具体的な状況と支え方を共有します。
自分で落ち着く力が周囲との関わりの中で育つ過程は、子どもの感情調整の育ちでも説明しています。

心配なときは「怖がったか」より生活への影響を見る

怖さが発達上よく見られるものか、相談したほうがよい状態かを、年齢や対象だけで分けることはできません。

次のような点を組み合わせて見ます。

  • 怖さが非常に強い、または以前より強くなっている
  • 大人が支えても長い時間落ち着けない
  • 怖さや回避が長く続いている
  • 睡眠、食事、排泄、登園、遊びなどに影響している
  • 本人が楽しみたい活動にも参加できなくなっている
  • 腹痛や頭痛、いら立ちなどが続いている
  • 強く怖い経験の後から、様子が大きく変わった
  • 家庭や園だけで対応を考え続けることが難しい

CDCやNHSも、恐怖や不安が強く、長く続き、家庭・園や学校・遊びなどの日常生活を妨げている場合を相談の目安としています。

気になるときは、園の保育者、かかりつけの小児科、自治体の保健センターや子育て相談窓口などへ相談できます。
こども家庭庁は、身近な相談先として地域子育て相談機関やこども家庭センターを案内しています。

この記事だけで診断や発達の判定はできません。
「相談するほどではない」と一人で決める必要もありません。

生活への影響や関わり方に迷うことがあれば、ぜひ相談してみてください。

研究でまだ十分に分かっていないこと

年齢ごとに何を怖がりやすいかについては多くの研究がありますが、怖さが現れたり弱まったりする正確な時期には個人差があります。
文化、家庭環境、園での経験によっても、怖がる対象や表現の仕方が異なる可能性があります。

また、保護者の回答を用いた横断研究だけでは、ある関わりが怖さの原因になったのか、怖さが強い子どもにその関わりが増えたのかを区別できません。
日常の特定の声かけについて、「これをすれば必ずよくなる」と言える根拠も十分ではありません。

幼児本人の言葉を継続的に調べた研究や、日本の多様な生活環境を含む長期的な研究も、まだ限られています。

研究から分かる大まかな傾向と、目の前の子どもの様子を分けて考える必要があります。

まとめ

子どもの怖さは、危険を避け、安全を確かめるための自然な反応です。
想像力や記憶、先を予測する力が育つと、怖がる対象も変化します。

怖がること自体を、弱さや育て方の問題と考える必要はありません。

大人にできるのは、怖さを急いで消すことではなく、「怖かったね」と受け止め、何が起きるかを伝え、安全な距離と選択肢を用意することです。

無理に直そうとせず、子どもが落ち着ける小さな段階を一緒に探します。

心配なときは、年齢表に当てはめるのではなく、怖さの強さ、続き方、回復の様子、生活への影響を見ます。

家庭や園だけで考えることが難しいときは、早い段階で身近な相談先を利用してみましょう。

参考文献一覧

  1. Gullone, E.(2000)“The development of normal fear: a century of research.” Clinical Psychology Review, 20(4), 429–451. DOI
  2. 鹿島なつめ(2000)「幼児の不安認知と対処能力についての発達的変化」『九州大学心理学研究』1, 195–208. DOI
  3. 西澤千枝美・濱口佳和(2010)“Construction of Rating Scale on Young Children’s Anxiety Tendencies and Examination of Its Reliability and Validity.” 『カウンセリング研究』43(2), 150–160. DOI
  4. 富田昌平(2014)「幼児期における怖いもの見たさの心理の発達」『発達心理学研究』25(3), 291–301. DOI
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  6. Sandstrom, A., Uher, R., & Pavlova, B.(2020)“Prospective Association between Childhood Behavioral Inhibition and Anxiety: a Meta-Analysis.” Journal of Abnormal Child Psychology, 48, 57–66. DOI
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  9. National Health Service. “Anxiety in children.” NHS
  10. 国立精神・神経医療研究センター「不安症」こころの情報サイト
  11. 国立成育医療研究センター「子どもへの注射の説明」チャイルド・ライフ・サービス
  12. こども家庭庁「地域子育て相談機関」公式資料
  13. こども家庭庁「こども家庭センター」公式資料

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