大人を振り返りながら室内を歩き、木のおもちゃへ向かう1歳児のクレヨン画風イラスト

子どもの発達

1歳児の発達の特徴とは?言葉・運動・自我の育ち

1歳になると、歩き始める子がいる一方で、はいはいやつたい歩きをじっくり楽しんでいる子もいます。
言葉が増えてくる子もいれば、まだ言葉より表情や声、指さしで思いを伝えることが中心の子もいます。

こうした違いを見ると、「うちの子は遅いのでは」と心配になることがあるかもしれません。
しかし、1歳0か月と1歳11か月では、同じ「1歳」でも経験してきた時間が大きく異なります。
さらに、発達の道筋は一人ひとり違い、歩行や言葉など一つの行動だけで、その子の育ち全体を判断することはできません。

1歳期は、移動する力、物を扱う力、人と気持ちを共有する力、言葉、そして「自分でやってみたい」という気持ちが、互いに影響しながら育つ時期です。
この記事では、研究や公的資料をもとに、1歳児の姿を「できた・できない」ではなく、育ちのつながりから読みときます。

1歳代は変化の幅が大きい

こども家庭庁の「保育所保育指針」は、1歳以上3歳未満の時期について、歩行が安定して行動範囲が広がること、手指を使う活動が多様になること、言葉が増えること、自分の意思を表そうとすることなどを挙げています。同時に、こうした育ちは大人との応答的な関わりや、安心して探索できる環境のなかで進むとしています。

ただし、保育所保育指針が示しているのは、1歳から3歳未満までを含む大きな発達の流れです。「1歳○か月なら、これができる」という細かな達成表ではありません。同じ年齢でも、体格や健康状態、気質、興味、生活環境、それまでの経験によって、よく見られる姿は異なります。

大切なのは、運動、言葉、心、社会性を別々の点数のように見るのではなく、それらがどのようにつながっているかを見ることです。

移動できるようになった子が、興味のある物を大人のところへ運び、指をさし、大人の言葉を聞く。大人の動作をまねして物を使い、うまくできずに怒り、助けてもらってもう一度試す。この一連の姿すべてが、1歳児の育ちです。

移動する力が探索の世界を広げる

歩行は発達のゴールではなく、新しい経験の入口

1歳代には、はいはい、つかまり立ち、つたい歩き、一人歩きなど、さまざまな方法で自分の行きたい場所へ向かう姿が見られます。歩き始める時期には大きな個人差があります。

世界保健機関(WHO)が6か国の乳幼児を追跡した研究でも、一人歩きを含む粗大運動の獲得時期には広い幅が確認されました。また、一般的な順序とは異なる経過をたどる子や、四つばいでのはいはいを示さない子もいました。

運動発達の研究者であるカレン・アドルフらも、運動の育ちは身体だけで決まるのではなく、床や家具などの環境、衣服、日常的な経験、文化とも関係すると整理しています。

歩けるようになることの意味は、早く移動できることだけではありません。立った姿勢では見える範囲が変わり、両手で物を持って運べるようになります。興味のある物を大人に見せに行く、別の場所で見つけた物を持ち帰るといった経験も増えていきます。

米国の乳児を追跡した研究では、歩行の獲得と理解語・表出語の増加との間に関連が報告されています。ただし、これは「歩けば言葉が増える」という因果関係を証明したものではありません。

歩行によって探索や人とのやりとりが変化し、その新しい経験が言葉の育ちとも関わっている可能性があります。

手指の動きと物の扱いも育っていく

1歳児の運動発達は、歩く、走るといった全身の動きだけではありません。物をつまむ、容器に入れる、取り出す、積む、ページをめくる、スプーンを持とうとするといった手指の活動も広がります。

初めから上手にできるわけではなく、同じ動きを何度も繰り返しながら、物の大きさ、重さ、形、向きなどを確かめています。大人には単純に見える「入れては出す」遊びも、子どもにとっては手の動かし方と物の性質を学ぶ探索です。

指さし・共同注意から言葉が育つ

話す前にもコミュニケーションは育っている

言葉の発達というと、何語話せるかに目が向きやすいものです。しかし、話し言葉が現れる前から、子どもは表情、視線、発声、身振りを使って人とやりとりしています。

たとえば、子どもが犬を見て指をさし、大人の顔を見ます。大人が「あ、犬だね」と応じると、子どもと大人は同じものに注意を向けます。このように、物や出来事への注意を人と共有することは「共同注意」と呼ばれ、コミュニケーションと言葉の土台の一つになります。

指さしには、欲しい物を伝えるだけでなく、「見つけたよ」「一緒に見て」という共有の意味が含まれることがあります。まだ単語を話していなくても、大人の言葉を聞いて振り向く、身近な物の名前を理解する、声や身振りで返事をするなど、言葉につながる育ちは進んでいます。

指さしや単語の時期だけで判断しない

指さしと言語発達の関係を調べた2022年のメタ分析では、両者の間に小さいながらも統計的な関連が確認されました。しかし、指さしだけで将来の言語発達を予測できるわけではありません。

この研究に含まれた資料は西洋の単一言語環境に偏っており、日本語を育てる子どもへ数値をそのまま当てはめることもできません。

また、東京の保育園で乳児23人を観察した研究では、歩行の発達に伴い、移動や大人への視線を組み合わせた指さしが増える傾向が報告されました。日本の子どもを対象とした貴重な研究ですが、人数が少なく、一つの園で行われた観察研究です。すべての1歳児に共通する順序を示したものではありません。

「最初の言葉はいつか」「何語話すか」だけでなく、人の声に注意を向ける、やりとりを続けようとする、身振りで伝える、言葉と物を結びつけるといった複数の姿を合わせて見ることが大切です。

こうした1歳期の育ちがその後の会話や物語へどうつながるかは、「0~6歳の言語発達」で詳しく解説しています。

模倣と物遊びから「使い方」を学ぶ

1歳代には、大人が髪をとかす姿を見てブラシを頭に当てる、電話のような物を耳に近づける、布で机を拭くといった模倣が見られるようになります。

子どもは、ただ動作の形をまねしているだけではありません。人がその物をどう扱うのかを見て、用途や行動の流れを学んでいます。

物を扱う力が育つと遊び方が広がり、遊びを繰り返すことで、さらに手指の調整や物への理解が深まります。研究でも、物を扱う技能と遊びは互いに支え合う関係にあると整理されています。

もっとも、いつ、どのような模倣をするかは、家庭にある物や日常的に目にする行動によっても変わります。特定の遊びをするかどうかを、知能や発達の高さの判定に使うことはできません。

子どもが何に注目し、どう試し、どのような反応を大人に求めているかを見ることが重要です。


この記事で分かること

  • 1歳児の運動・言葉・自我が、どのようにつながって育つのか
  • 歩き始める時期や発達の道筋に個人差がある理由
  • 指さしや共同注意が、コミュニケーションと言葉に果たす役割
  • 模倣や物遊び、「自分でやりたい」という姿が示す育ち
  • 1歳児を見るときの手がかりと、気になるときの相談先

「自分で」の芽生えは自我の育ち

1歳代になると、食べたい物を選ぶ、行きたい方向を示す、大人に止められて怒る、手伝おうとすると嫌がるなど、自分の意思がはっきり見える場面が増えてきます。

これは、単なる「わがまま」ではありません。
自分の好みや目的を持ち、それを実現しようとする自我の芽生えです。

一方で、やりたいことを実現する運動能力や言葉、気持ちを立て直す力はまだ発達の途中です。
そのため、「自分でやりたいのにできない」「伝えたいのに伝わらない」という場面では、泣く、怒る、物を投げるといった反応になることがあります。

保育所保育指針は、この時期の「自分でしようとする気持ち」を尊重しながら、子どもの気持ちを受け止め、必要な援助をすることを重視しています。
すべてを任せるという意味ではなく、安全を守りながら、子どもが参加できる部分を残す関わりです。

たとえば、着替えをすべて一人で行うことは難しくても、袖に腕を通そうとするのを待つ。
食事をこぼさずに食べることは難しくても、自分でスプーンを持つ時間をつくる。
うまくいかない気持ちを大人が「自分でやりたかったね」と言葉にする。

こうした関わりが、意思を持つことと、人に支えてもらうことの両方を育てます。

身近な大人をよりどころに外へ向かう

探索している1歳児は、大人から離れて遊んでいたかと思うと、振り返って大人の顔を確かめたり、戻ってきて体に触れたりします。初めて見る物に近づく前に、大人の表情を見ることもあります。

こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」は、子どもの育ちにおける「安心と挑戦の循環」を重視しています。受け止めてもらえるという安心があるからこそ、子どもは外の世界へ関心を広げ、試し、失敗し、また挑戦できます。

ただし、いつも大人から離れて遊べることが「よい発達」なのではありません。疲れているとき、体調が悪いとき、慣れない場所にいるときには、強く抱っこを求めることもあります。

大人との距離だけで子どもの発達や親子関係を評価せず、そのときの状況や、求めたときに応じてもらえているかを含めて考えます。

生活リズムの育ちにも個人差がある

食事、睡眠、着替え、排泄、手洗いなどの生活習慣も、1歳期に突然完成するものではありません。
大人に支えられながら毎日の流れに参加し、少しずつ見通しを持つようになる過程です。

昨日できたことを今日は嫌がることもあります。
眠気や空腹、体調、周囲の刺激によっても、子どもの行動は変わります。
一度の姿だけで「できない」と決めず、どのような状況なら参加しやすいかを見ます。

生活リズムを整えることは大切ですが、起床、食事、昼寝などをすべて同じ時刻に合わせることが目的ではありません。
子どもの体調や家庭の生活を踏まえ、ある程度予測できる流れをつくりながら、無理のない範囲で繰り返していきます。

1歳児の姿を見るときの手がかり

「できる項目」より、育ちのつながりを見る

1歳児の姿を見るときは、歩く、話すといった目立つ結果だけでなく、次のような過程にも目を向けてみましょう。

  • 興味のある人や物へ、自分なりの方法で近づこうとしているか
  • 表情、声、視線、身振り、言葉などで、人に伝えようとしているか
  • 大人の反応を確かめたり、見つけた物を共有しようとしたりするか
  • 人の動作を見て、自分でも試そうとするか
  • 難しいときに助けを求めたり、支えてもらって再び試したりするか

これらも、すべての項目が同じ時期に見られなければならないというチェックリストではありません。

他の子と比べるより、「少し前はどうだったか」「どのような場面でよく見られるか」という、その子自身の変化を捉えるための視点です。

気になるときは一人で判断しない

発達には幅がありますが、「個人差だから、いつまでも様子を見ればよい」という意味ではありません。
保護者が気になると感じていることや、日常生活で困っていることがあれば、第三者に相談することも考えてみましょう。

日本では、市区町村が1歳6か月児健康診査を実施しています。
健診は合否を決める場ではなく、子どもの健康や発達、生活、子育てについて相談する機会です。

また、健診の時期を待たず、気になる変化があるときや、以前できていたことが見られなくなったときは、かかりつけの小児科、自治体の母子保健窓口、地域の発達相談窓口などに相談できます。

専門書や研究、インターネットの記事だけで個別の発達を判断することはできません。
実際の子どもの姿と生活全体を知る専門職と一緒に考えることで、その子と家族に合った支え方を見つけやすくなります。

まとめ

1歳期は、歩行、言葉、自我を別々に完成させる時期ではありません。
移動できる範囲が広がることで探索が増え、物を扱い、人の動作をまね、見つけたものを指さしや声で共有するようになります。
「自分でやりたい」という気持ちも、大人に支えられながら試す経験のなかで育ちます。

歩き始めや最初の言葉の時期には大きな個人差があります。
目立つ一つの行動だけでなく、子どもが人や物にどう関心を向け、どのような方法で関わろうとしているかを見ていくことが大切です。

そして、安心できる大人との関係は、子どもが外の世界へ踏み出すためのよりどころになります。
比べるなら他の子ではなく、その子自身の少し前の姿と比べながら、小さな変化を見つけていきましょう。

そして、なにか心配ごとがあるときは、一人で答えを出そうとせず、健診や身近な専門職を利用して相談してみてください。

関連記事

参考文献・公的資料

  • こども家庭庁『保育所保育指針』2017年告示(2018年適用)。PDF
  • こども家庭庁『幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)』2023年。PDF
  • こども家庭庁「乳幼児健診」。公式ページ
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