絵カードを使って英語で伝え合い、タブレットで音声を聞き直す小学生4人のクレヨン画

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小学校英語はどう変わる?外国語WGの検討状況

小学校の英語が、次の学習指導要領で変わろうとしています。

「英語は1年生から始まるの?」「覚える単語がさらに増える?」「AIを使って会話を練習するようになる?」と気になる方もいるでしょう。

2026年8月3日、文部科学省は中央教育審議会の外国語ワーキンググループがまとめた「取りまとめ(案)※会議後修正」を公表しました。

そこには、小学校から中学校へ英語の学びをつなぐ方法、語彙や学習内容の難しさ、デジタル・AIの活用、評価の整理など、今後の方向が示されています。

ただし、これは新しい学習指導要領そのものではありません。
開始学年や授業時数、使う単語、AIの具体的な利用方法まで決まったわけではありません。

この記事では、2026年8月26日時点の公表資料を基に、「現在決まっていること」「検討中の方向」「まだ決まっていないこと」を分けて、小学校英語がどう変わろうとしているのかを整理します。


この記事で分かること

  • 現在の小学校英語と、次期改訂で検討されている内容の違い
  • 3・4年生から5・6年生、中学校へ学びをつなぐ方向
  • 語彙、読み書き、コミュニケーション、AI、評価がどう見直される可能性があるか
  • まだ決まっていない開始学年、授業時数、実施時期
  • 保護者と教育関係者が、今の段階で考えておきたいこと

変わる方向は見えたが、まだ最終決定ではない

現時点の結論を先に言うと、小学校英語は、内容を一方的に増やすというより、学びのつながりと難易度を整え直す方向にあります。

2026年6月18日に外国語ワーキンググループの第13回会議が開かれ、会議後の修正を反映した取りまとめ案が8月3日に公表されました。

資料では、3・4年生の外国語活動から5・6年生の外国語科へ、さらに中学校へと、話題、活動、指導事項を段階的につなぐ方針が示されています。

一方、この資料名には「案」と明記されています。
今後、教育課程全体の審議、答申、学習指導要領の告示、解説や評価資料の作成などを経て、学校で実施される内容が具体化します。

したがって、「小学校英語が○年から必ずこの形に変わる」「1年生から全国一律で英語が始まる」といった説明は、2026年8月27日時点ではできません。

現在の小学校英語はどうなっている?

現行の小学校学習指導要領は、2020年度から全面実施されています。

3・4年生には「外国語活動」があり、年間35単位時間が標準です。英語の音声に慣れ、聞くことと、話すことのやり取り・発表を中心に、言葉や文化への気付きを育てます。

5・6年生には、教科としての「外国語」があり、年間70単位時間が標準です。聞くこと、読むこと、話すことのやり取り・発表、書くことの五つの領域を扱います。

ただし、小学校での読む・書くは、中学校の文法学習をそのまま前倒しするものではありません。
音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や表現を、読んだり書いたりすることから始めます。

次期改訂の議論も、この3・4年生から5・6年生へ進む枠組みを前提に、接続をより分かりやすくする内容になっています。
現段階で、この枠組みを廃止する方向は示されていません。

なぜ小学校英語の見直しが検討されているのか

外国語ワーキンググループは、現行制度に成果と課題の両方があると整理しています。

成果としては、3・4年生で音声を中心に英語へ慣れ、5・6年生で読む・書くへ進む流れが作られたことが挙げられています。
令和4年度の学習指導要領実施状況調査では、聞く、読む、話す、書くの各側面で、多くの子どもが答えられた問題が見られました。

また、小学生への質問では、どの学年でも8割以上が英語を学ぶ意欲を示したと報告されています。

一方、課題もあります。

一文を書き写す問題では学校による差が見られ、読むこと・書くことについて、子どもが関心をもちにくい、理解しにくいと感じる教師も多くいました。

小学校で音や会話に慣れてきたのに、中学校へ進むと単語の綴りや文法を急に求められるように感じるなど、学校段階のつながりも課題です。
教科書によって扱う単語の難しさや種類に違いがあり、中学校での学習負担が大きくなっているという指摘もあります。

そこで、単に学ぶ量を増やすのではなく、「どの段階で何に慣れ、何を使えるようにするか」を整理し直す必要があると考えられています。

小学校英語で示された主な変更方向

3・4年生、5・6年生、中学校のつながりを明確にする

取りまとめ案では、小学校内と小中間の接続を、これまで以上に具体的に示す方針です。

3・4年生では、まず音声を中心に英語へ慣れます。5・6年生では、聞く・話す経験と結び付けながら、読む・書くへ進みます。
らに中学校では、小学校で扱った音声、語句、表現をもう一度使いながら、発音と綴り、文の仕組みを丁寧につなぐ方向です。

新しく学んだ言葉は、一度扱っただけですぐ自由に使えるようになるわけではありません。
前に学んだ言葉や話題を、発達の段階に応じて繰り返し使うことが重視されています。

「英語を使って何ができるか」を段階ごとに示す

現行の学習指導要領では、聞く、読む、話す、書くという領域ごとに目標が示されています。
次期改訂では、目標と内容の重なりを整理し、学年段階の目安とともに、話題や活動がどう深まるかを表で示す方向です。

これは、子どもを細かな到達表で選別するためではありません。
教科書や授業を作る側が、前の段階とつながる内容を考えやすくし、「英語を使って何ができるようになるか」を分かりやすくするための見直しです。

音と文字、日本語と英語の語順をつなぐ

5・6年生では、音声で慣れ親しんだ簡単な言葉を読んだり書いたりしながら、音と文字の関係に気付くことが重視されます。
また、中学校の文法学習へつなぐため、日本語と英語では言葉を並べる順序が違うことなど、文の形への気付きを促す方向も示されました。

ただし、小学校で文法用語を大量に覚えるという意味ではありません。
取りまとめ案が重視しているのは、言葉の特徴に気付き、実際のやり取りの中で理解や表現に生かすことです。

基盤語彙リストを作り、難しさを整える

現行制度では、どの語を優先するかの具体的な共通リストがなく、教科書によって扱う語彙にばらつきがあります。

取りまとめ案では、使用頻度などを踏まえ、国が語彙選定の土台となる「基盤語彙リスト」を作る方針が示されました。
教科書会社には、そのリストの語を使うことを勧めるとされています。

指導する語彙数についても、難易度や重要度を見ながら、精選を含めて見直します。

これは、覚える単語を一律に増やす方針ではありません。むしろ、重要な語を何度も使い、教科書の難しさが過度に上がらないようにするための検討です。

ただし、リストに入る具体的な単語や語彙数は、まだ公表されていません。

伝え合う活動と、それを支える学習を往復する

現在使われている「言語活動」という言葉は、外国語では意味の捉え方にばらつきがあるとされました。

次期改訂では、主に考えを伝えたり理解したりする「コミュニケーション活動」と、語彙や表現、音声などを身に付ける「コミュニケーション活動を支える活動」に整理する方向です。

名前を変えること自体が目的ではありません。
単語や表現を知るための学習と、それを使って相手へ伝える活動のどちらか一方へ偏らず、二つを行き来しながら学ぶことが中心です。

デジタルとAIを、発達段階に応じて活用する

取りまとめ案は、オンライン交流などを含むデジタル学習基盤の活用を、学習指導要領へ明記する方針を示しました。
その一つとして、AIも発達段階に応じて適切に使うことが検討されています。

たとえば、英語を話す機会を増やす、発音や表現を試す、録音を聞き直す、伝えたい内容を整えるといった活用が考えられます。

ただし、「小学生全員が生成AIと自由に会話する」「AIが先生の代わりに評価する」と決まったわけではありません。
どの学年で、どの機能を、どのような安全上の配慮とともに使うかは未確定です。

国が今後、考え方、留意点、実践例、動画や資料を示すとしています。

評価の手順と教員への支援を整理する

現在、学校は複数の段階で評価規準を作成しており、手順が複雑になりやすいという課題があります。

次期改訂では、国が「内容のまとまりごとの評価規準例」を示し、学校ごとの作成を不要とする方向です。
学校が作る単元の目標を、そのまま評価規準として使いやすくすることも検討されています。

また、小学校の学級担任と英語専科教員のそれぞれに合う研修、ALT等との連携を支える資料、全国規模のオンライン研修を用意する方針も示されました。

まだ決まっていないこと

2026年8月26日時点で、次の点は確定していません。

  • 全国一律の英語開始学年を変えるか
  • 3・4年生の年間35時間、5・6年生の年間70時間を変えるか
  • 新しい学習指導要領を何年度から全面実施するか
  • 基盤語彙リストに入る具体的な単語と語彙数
  • 学年ごとの詳しい内容、教科書、評価問題
  • 小学生が使うAIの種類、利用場面、個人情報・安全面の具体的な基準

一部の自治体や学校では、制度を利用して低学年から外国語の活動を行っています。
今後、地域独自の取組が広がる可能性はありますが、それは全国の1・2年生で英語が必修になることと同じではありません。

「検討されている方向」と「全国で実施が決まった制度」を分けて受け取る必要があります。

保護者は今から何を準備すればよい?

今回の資料を理由に、就学前から単語や文法を急いで先取りしたり、新しいAI教材をすぐ購入したりする必要はありません。

次期改訂でも、小学校の英語は、音声で十分に慣れ親しんだ言葉を、少しずつ読む・書くへつなぐ考え方を大切にしています。

幼児期から入学前の子どもには、正解を多く覚えることだけでなく、人の話を聞く、伝えたいことをもつ、分からないときに聞き返す、音や言葉の違いを面白がるといった経験が土台になります。

5~6歳児の発達で見られる言葉、思考、友達とのやり取りは、外国語だけのために育てる力ではありません。
遊びや生活の中で考え、伝え、相手の反応を受け取る経験が、新しい言葉を学ぶ場面にもつながります。

また、幼児期の学びを学校内容の先取りだけで捉えないことも大切です。
英語を家庭で始めるか迷う場合は、早期英語教育の開始年齢だけでなく、子どもの興味、やり取りの質、続けられる環境から考えることができます。

すでに小学生の子どもがいる家庭では、「何単語覚えたか」だけでなく、英語の時間に何を伝えようとしているか、読む・書くのどこで難しさを感じているか、学校で使う教材やデジタル機器がどのような目的で使われているかを聞くと、学びの様子が見えやすくなります。

教育関係者が見ておきたい点

教育関係者にとって、今回の方向性は新しい用語へ置き換えるだけの改訂ではありません。

3・4年生の外国語活動から5・6年生の外国語科へ進むとき、音声で親しんだ内容をどう文字へつなぐか。

中学校へ進むとき、小学校で扱った言葉を「もう習った」として終わらせず、どう繰り返し使うか。これらの接続を、学校間で共有する必要があります。

AIやデジタル教材についても、使った時間の長さではなく、子どもが英語を理解し、試し、伝え直す機会が増えたかを見ることが重要です。
子どもの年齢、読み書きの経験、端末操作の負担、個人情報、誤った出力への対応など、具体的な条件は今後の資料を待つ必要があります。

評価では、子どもが一度の発表やテストでうまく表せなかったことを、そのまま英語への関心や力の不足と決めないことが大切です。
授業の途中でつまずきを見取り、次の学び方を調整する評価と、学期や学年の終わりに学習状況をまとめる評価を分けて考える必要があります。

研究からまだ十分に分かっていないこと

2025年に小学校英語教育学会誌へ掲載された酒井英樹らの研究は、過去の学会提言、中央教育審議会の議論、有識者12人へのインタビューを分析しました。
その結果、評価、開始学年・授業時数、目標、ICT、教員養成・研修が重要な論点として整理されています。

同時に、過去の政策議論には、課題が指摘されても十分に検討されなかったものや、研究上の根拠が明確に示されなかったものがあると報告されました。

今回の取りまとめ案は、制度をどう改善するかという政策の方向を示す資料です。
新しい語彙リストやAI活用、評価方法が、子どもの理解、意欲、負担、学校間の差にどのような影響を与えるかを証明した研究ではありません。

具体的な学習指導要領、解説、教材、研修が整った後も、実際の授業でどのような結果が生まれるかを継続して確かめる必要があります。

今後はいつ確認すればよい?

文部科学省は、2026年8月31日に教育課程企画特別部会の第17回会議を開く予定です。予
定は審議状況によって変わる可能性がありますが、外国語を含む各教科の取りまとめが教育課程全体の議論へどう反映されるかを見る次の機会になります。

この記事は、まず2026年9月上旬に会議後の公表資料を確認する必要があります。
その後、中央教育審議会の答申、学習指導要領の告示、外国語活動・外国語の解説、標準授業時数、評価資料の公表時に更新を検討します。

情報を確認するときは、報道記事の見出しだけでなく、文部科学省の外国語ワーキンググループのページで、資料名に「案」「会議後修正」などの表示があるかを確かめると、決定段階を見分けやすくなります。

まとめ

2026年8月時点の検討では、小学校英語は、早く、難しく、多く学ばせる方向だけを目指しているわけではありません。

3・4年生の音声中心の活動から、5・6年生の読む・書くを含む学びへ、さらに中学校へと、子どもが無理なく進めるように内容をつなぐことが中心です。

重要な語を繰り返し使えるよう語彙と難易度を整え、伝え合う活動とそれを支える学習を往復し、発達段階に応じてデジタルやAIを使う方向も示されています。

一方、開始学年、授業時数、具体的な語彙、AIの使い方、実施時期はまだ確定していません。

家庭では、未確定の情報を理由に先取りや教材購入を急ぐより、子どもが言葉を通して考え、相手へ伝え、伝わらなければ工夫する経験を大切にできます。

今後の公表資料では、「何が変わるか」だけでなく、その変更が子どもの学びの連続性、分かりやすさ、安心につながる設計になっているかを見ていく必要があります。

参考文献一覧

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