タブレットの丸印を見ながら木の実を小皿に分ける幼児と保護者のクレヨン画

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教育アプリは幼児の文字・数の学びに役立つ?

「ひらがなや数に興味をもってほしい」「遊びながら学べるなら、教育アプリを使ってみたい」と考える家庭は少なくありません。

一方で、画面を見せる時間が増えることや、本当に学びにつながるのかが気になることもあるでしょう。

研究をまとめて確認すると、内容のよい教育アプリは、幼児の文字や数の学びを支えることがあります。

ただし、教育アプリを使えば、どの子も大きく伸びるという意味ではありません。「教育用」と表示されているだけでは、内容のよさも保証されません。

大切なのは、アプリを学びの中心にするのではなく、会話や絵本、遊び、実物に触れる経験を補う道具として使うことです。

この記事では、3~6歳向けの文字・読み書き、数・簡単な計算を扱う教育アプリについて考えます。


この記事で分かること

  • 教育アプリによって伸びる可能性がある力
  • 「教育用」と表示されたアプリを、そのまま信用できない理由
  • 幼児向け教育アプリを選ぶときの確認点
  • アプリでの学びを日常生活につなげる使い方
  • 現在の研究では、まだ十分に分かっていないこと

教育アプリは文字や数の学びに役立つことがある

結論からいうと、教育アプリは、ひらがなや数を覚えるための練習の助けになることはあります。
ただし、役立ち方はアプリの内容や使い方によって異なります。

複数の研究では、少しよい結果がみられた

幼児から小学校低学年までを対象とした36件の研究をまとめた分析では、教育アプリを使った子どもは、普段どおりの学習をした子どもや、別の活動をした子どもに比べて、文字・読み書きと数学の課題で少しよい結果を示しました。

ただし、すべての研究で同じ結果が出たわけではありません。

アプリで練習した内容に近い問題では違いが表れやすい一方、幅広い力を調べる一般的な検査では、違いが小さくなる傾向がありました。

この研究から分かるのは、「教育アプリにはまったく意味がない」わけではないということです。

一方で、「アプリを使えば学力が大きく伸びる」「どのアプリでも同じように役立つ」とまでは言えません。

詳しくは、教育アプリに関する36件の研究をまとめた分析で確認できます。

家庭で使った研究でも、練習した力の伸びが確認された

ドイツで行われた研究では、5歳前後の子ども約500人を対象に、家庭で教育アプリを使った場合の変化が調べられました。

子どもたちは、数を学ぶアプリまたは文字・言葉を学ぶアプリを、幼稚園に通う期間の約半年間、家庭で使用しました。

その結果、数のアプリを使った子どもには数に関する力、文字・言葉のアプリを使った子どもには読み書きにつながる力の伸びがみられました。

ただし、この研究で使われたのは、学習目的に合わせて研究者が開発したアプリです。

一般のアプリストアにあるすべての商品に、同じ結果を期待できるわけではありません。

また、ドイツで行われた研究であり、言語や教育環境が異なる日本の子どもにも同じ結果になるとは限りません。

アプリで伸びやすいのは、繰り返し練習できる力

教育アプリが役立ちやすいのは、答えが比較的はっきりしていて、繰り返し練習できる内容です。

文字で名前を覚える、文字と音を結びつける、同じ文字を見つける、物の数を数える、数字を選ぶ、形を分けるといった活動は、アプリと相性がよいと考えられます。

子どもが答えるとすぐに反応が返ってくるため、自分で試しながら練習しやすいことも利点です。

紙の教材では大人が答えを確認する必要がありますが、アプリならその場で正誤が示されます。

一方、文章の意味を深く考える、数を使って問題を解く、自分の考えを言葉で説明するといった力は、画面上の反復練習だけで十分に育つとは言えません。

文字や数字を選べるようになったことと、生活の中で意味を理解して使えることは同じではないからです。

「教育用」と表示されていても、内容がよいとは限らない

アプリストアでは、多くの商品が「知育」「幼児教育」「文字が身につく」と紹介されています。

しかし、こうした表示だけで、実際の学習効果を判断することはできません。

人気の教育アプリでも、学びに集中しにくいものがある

市販されている幼児向け教育アプリ124本を調べた研究では、子どもが考えて操作できるか、内容が生活や経験と結びついているか、誰かとの会話につながるかなどが確認されました。

その結果、これらの条件を十分に満たしているアプリは多くありませんでした。特に、学習とは関係のない飾りや音、広告などが、子どもの注意をそらしている例がみられました。

この研究は、アプリストアで人気のある商品や、多くの幼児が使っていた商品を調べたものです。

ただし、調査時点の海外向けアプリが中心であり、現在の日本のアプリをすべて評価した結果ではありません。

それでも、「人気がある」「有料である」「教育用と書かれている」という理由だけでは、内容のよさを判断できないことが分かります。

ごほうびが多いことと、学びやすいことは別

正解するとキャラクターが大きく動く、コインがたまる、次々と別の画面が開くといった仕組みは、子どもの興味を引くことがあります。

しかし、子どもが文字や数ではなく、ごほうびを集めることに意識を向けている場合は、学習内容が残りにくくなる可能性があります。

楽しさがあること自体は問題ではありません。確認したいのは、「何を考えればよいかが分かる楽しさ」なのか、「画面から次々と刺激が出てくる楽しさ」なのかという点です。

幼児向け教育アプリを選ぶときの確認点

アプリを選ぶときは、紹介文や利用者の評価だけでなく、実際の画面と子どもの様子を確認することが大切です。

何を学ぶアプリなのかが分かりやすい

「知育全般」など対象が広すぎるものより、文字を探す、数を数える、形を比べるなど、何を練習するのかが分かりやすいアプリのほうが、目的に合っているかを判断しやすくなります。

年齢表示だけでなく、問題の難しさも確認しましょう。同じ5歳でも、文字への関心やこれまでの経験は一人ひとり異なります。

対象年齢は合否を決める基準ではなく、選ぶための大まかな目安です。

子どもが考えてから操作できる

画面を眺めているだけではなく、子どもが選ぶ、数える、比べる、予想するといった動きがあるかを確認します。

ただし、何となく画面のあちこちを触っても先へ進めるものは、子どもが考えているように見えても、学習内容を理解していないことがあります。

子どもが「なぜこれを選んだのか」「何が分かったのか」を、短い言葉や指さしで示せるかを見ると、理解の様子を捉えやすくなります。

広告や余計な刺激が少ない

学習中に広告が表示される、別の商品へ移動できる、何度も購入を促されるといったアプリは、幼児が一人で扱うには注意が必要です。

大きな音や長い演出が繰り返される場合も、子どもが学習内容より刺激を追いかけていないかを確認します。

無料アプリがすべて悪く、有料アプリがすべてよいわけではありません。料金ではなく、広告、追加購入、外部サイトへの移動、学習を妨げる演出の有無を見ます。

個人情報の扱いを確認できる

子どもの名前、生年月日、音声、写真、位置情報などの入力を求められる場合は、それが本当に必要かを確認します。

利用前に、どのような情報が集められるのか、第三者に提供されることがあるのか、記録を削除できるのかを保護者が確認しましょう。

内容が分かりにくいアプリは、子どもに使わせる前に慎重に判断する必要があります。

アプリは「使った後」の関わりで日常の学びにつながる

教育アプリの中で正解できても、そこで学んだことを生活の中で使えるとは限りません。

アプリでリンゴを5個数えた後に、食卓の皿を数えてみる。

画面で覚えた文字を、絵本の表紙や店の看板から探してみる。

このように、画面の中の学びを実物や会話につなげることで、子どもは「これは生活の中でも使える」と気づきやすくなります。

最初は大人も一緒に使う

使い始めは、大人も隣で画面を見てみましょう。すべてを教えたり、正解へ導いたりする必要はありません。

「どれだと思う?」「同じものが家にもあるかな」と声をかけるだけでも、子どもが考えたことを言葉にするきっかけになります。

慣れてきたら、子どもが一人で取り組む時間があってもかまいません。ただし、終わった後に「何をしたの?」と話を聞くと、操作だけで終わらず、経験を振り返りやすくなります。

学びは教材だけで完結するものではありません。幼児期の学びと遊び・生活のつながりもあわせてご覧ください。

時間の長さだけで判断しない

「何分なら必ず安全」「何分を超えたら必ず悪影響がある」と、一つの数字だけで決めることはできません。

見るべきなのは、アプリの内容、使う場面、子どもの様子、ほかの活動とのバランスです。食事や睡眠、体を動かす遊び、絵本、家族との会話などが押し出されていないかを確認します。

終わる時間を突然告げると、子どもが切り替えにくいことがあります。
「この問題が終わったらおしまい」など、区切りを先に伝えておくと見通しをもちやすくなります。

米国小児科学会も、画面を見る時間だけではなく、内容の質、使う状況、大人との会話を含めて考えるよう示しています。

子どものデジタル利用に関する解説では、睡眠、運動、読書、遊び、家族の時間を守ることや、大人が一緒に使うことなどが勧められています。

アプリを使わなくても、文字や数は生活の中で学べる

教育アプリは便利な選択肢ですが、幼児期の文字や数の学びに欠かせないものではありません。

買い物で品物を数える、料理で一つずつ皿を並べる、絵本で知っている文字を探す、階段を上りながら数えるといった経験も、文字や数への関心につながります。

子どもがアプリに興味を示さない場合、無理に使わせる必要はありません。
アプリを使わないことが、学びの遅れを意味するわけでもありません。

また、就学前に育つ力は、文字を読めることや計算ができることだけではありません。

人の話を聞く、自分の思いを伝える、試して考える、友達と遊ぶといった経験も大切です。5~6歳児の発達と就学前に育つ力も参考にしてください。

日本の幼児教育では、実際に見て触れる経験が重視されている

2026年2月24日、文部科学省の幼児教育に関する会議で、幼児期にデジタル機器をどのように活用するかが話し合われました。

会議では、デジタル機器を使って身近なものを記録する、詳しく調べる、自分の考えを表す、離れた相手とやり取りするといった活用例が示されています。

一方で、幼児期には、実物を見たり、触れたり、動かしたりする経験が重要であることも確認されています。

つまり、デジタル機器だけで活動を完結させるのではなく、実際の体験を広げるために使うという考え方です。

ただし、これは会議で検討された内容であり、新しい幼稚園教育要領などとして決定されたものではありません。

2026年8月23日時点では、今後の方針が検討されている段階です。

現在の検討内容は、文部科学省の幼児教育におけるデジタル機器の活用に関する資料と会議の議事録で確認できます。

研究からまだ十分に分かっていないこと

教育アプリに関する研究からは、文字や数の一部の力を支えられる可能性が示されています。

しかし、次の点はまだ十分に分かっていません。

  • アプリの使用をやめた後も、学んだことが長く残るか
  • アプリで覚えたことを、生活や別の学習場面でも使えるか
  • どのような子どもに、どのアプリが合うか
  • 日本語を学ぶ日本の幼児にも、海外研究と同じ結果がみられるか
  • 一般に販売されているアプリの多くに、研究で使われたアプリと同じ効果があるか

これまでの研究は海外で行われたものが多く、対象となった言語や教育環境もさまざまです。
特に文字の学習は、言語によって音と文字の結びつき方が異なります。

英語圏の研究結果を、日本語のひらがな学習へそのまま当てはめることはできません。

家庭では「研究で効果があったらしいから使わせなければ」と考えるのではなく、目の前の子どもが興味をもち、無理なく取り組めているかを見ながら判断することが大切です。

まとめ

教育アプリは、文字を見分ける、数を数える、形を比べるといった、繰り返し練習しやすい内容を支えることがあります。

ただし、効果はアプリの内容や使い方によって異なり、「教育用」という表示だけでは判断できません。

選ぶときは、学ぶ内容が分かりやすいか、子どもが自分で考えられるか、広告や余計な刺激が少ないか、個人情報が適切に扱われているかを確認しましょう。

そして、画面の中で学んだ文字や数を、会話、絵本、買い物、食事の準備、遊びなどへつなげることが大切です。

教育アプリを使うかどうかだけで、子どもの学びが決まるわけではありません。

家庭の生活や子どもの興味に合う場合に、学びを補う選択肢の一つとして取り入れるのがよいでしょう。

参考文献

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  • Munzer, T., Parga-Belinkie, J., Milkovich, L. M., et al.(2026)“Digital Ecosystems, Children, and Adolescents: Policy Statement.” Pediatrics, 157(2), e2025075320. 米国小児科学会の声明
  • 文部科学省(2026)教育課程部会 幼児教育ワーキンググループ(第5回)配付資料・議事録

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