「同じ年の子はもう話しているのに」「単語はいくつ出ていればいいの?」と、子どもの言葉が気になることは珍しくありません。
ただ、言葉は最初の一語から突然始まるものではありません。
声に気づく、顔を見る、指さしに視線を向ける、身振りで伝える、相手の話を聞く。
こうしたやりとりが重なり、話し言葉や会話へつながっていきます。
この記事では、0~6歳の言葉の育ちを年齢ごとの大まかな流れに沿って見ていきます。
年齢は合否を分ける基準ではなく、今の姿を読みとくための目安です。
単語数だけでは見えにくい「理解する力」「伝えようとする力」「やりとりする力」にも目を向けます。
この記事で分かること
- 言葉の発達を単語数だけで見ない理由
- 0~6歳に見られる言葉の育ちの大まかな流れ
- 家庭や園で無理なくできる関わり方
- 研究で分かっていることと、まだ一律には言えないこと
- 言葉が気になるときの見方と相談先
言葉の発達は「話せる単語の数」だけではない
言葉の発達には、話すことだけでなく、音を聞き分けること、言葉の意味を理解すること、身振りや表情で伝えること、語彙や文法を使うこと、相手と会話を続けることが含まれます。
これらは別々に伸びながら、互いに支え合います。
幼児教育では、言葉だけを切り離さず、健康・人間関係・環境・表現と重ねて捉える5領域の考え方が使われています。
二つの言語を使って育つ子どもの語彙の見え方や、研究上の注意点は、幼児期の二言語教育に関する最新研究で整理しています。
「分かる言葉」と「話す言葉」は同じ速さで増えない
聞いて意味が分かる言葉を「受容語彙」、自分で使う言葉を「表出語彙」と呼びます。
多くの場合、理解できる言葉が先に広がり、話せる言葉があとから増えていきます。
米国で英語を聞いて育つ生後6~9か月の乳児33人を調べた実験では、日常的な名詞を聞いたときに対応する画像を見る傾向が示されました。
ただし、これは少人数の海外研究であり、「この月齢ならこの言葉が分かる」という個人の判定基準ではありません。
発語前にも言葉の理解が始まっている可能性を示す研究として受け取るのが適切です(Bergelson & Swingley, 2012)。
発音・語彙・文法・会話は、それぞれ違う側面
知っている言葉が増えても、すべての音をはっきり発音できるとは限りません。
短い文を話せても、出来事を順序立てて説明することはまだ難しい場合があります。
反対に、話す言葉は少なくても、指さしや表情、視線で豊かに伝えている子もいます。
言葉だけを切り離さず、運動、認知、感情、人との関係などと結び付けて見る考え方は、子どもの発達の基本でも解説しています。
0~1歳:声・視線・身振りから、やりとりが始まる
泣き声や喃語もコミュニケーションの一部
0歳の言葉の育ちは、泣く、声を出す、相手の声に注意を向けるといった姿から始まります。
大人が声や表情に応じると、子どもも声を返したり、間を取ったりするようになります。
この交互のやりとりは、のちの会話の形につながります。
やがて「あー」「ばばば」のような喃語が増えます。
喃語はまだ単語ではありませんが、口や舌を使って音を試し、周囲の言語のリズムや音に親しむ過程です。
声の量や時期には個人差があります。
視線や指さしで「同じものを見る」
大人と子どもが同じものへ注意を向けることを「共同注意」といいます。
子どもが犬を見て声を出し、大人も犬を見て「わんわん、いたね」と応じると、目の前の経験と言葉が結び付きやすくなります。
指さしは、欲しいものを伝えるだけではありません。
「見て」「おもしろいね」と気持ちを共有する働きもあります。米国の52家庭を追った研究では、18か月時の身振りの使い方が42か月時の語彙や文の発達と関連していました。
ただし観察研究なので、身振りがその後の言葉を直接生み出すと断定はできません(Rowe & Goldin-Meadow, 2009)。
0歳の身体、認知、人との関わりを含む全体像は、0歳児の発達で詳しく説明しています。
1~2歳:理解と身振りの上に、単語が増えていく
最初の言葉が出る時期には幅がある
1歳ごろになると、よく知っている人や物の名前、日常の動作に関わる言葉が少しずつ使われ始めます。
一つの言葉が「これを取って」「もっとほしい」「あそこにあるよ」など、場面によって広い意味を担うこともあります。
8~30か月の子どもを対象に、保護者報告で身振り・語彙・文法を調べた大規模研究は、言葉が増える時期や速さに大きな個人差があることを示しました(Fenson et al., 1994)。
話せる単語を数えることは変化を知る一つの方法ですが、数だけで発達全体を判断することはできません。
日本語では語彙と文法の育ち方にも特徴がある
日本語版の語彙チェックリストなどを用いた研究では、初期には名詞が比較的多く、その後、語彙が増えるにつれて動詞の割合や文法的な表現が広がる傾向が報告されています。
ただし、これは集団に見られる傾向で、すべての子が同じ順序をたどるわけではありません(小椋, 2007)。
「ぶーぶー」「わんわん」のような幼児語も、意味を共有できていれば大切な言葉です。
言い直しを求めるより、「わんわん、歩いているね」と自然な言葉を少し添えると、子どもの表現を受け止めながら語彙を広げられます。
厚生労働省の保育所保育指針も、子どもの言葉や表情に応じ、言葉のやりとりを楽しめるようにすることを示しています。
決まった言葉を覚えさせるのではなく、生活や遊びの中で意味を共有する考え方です(保育所保育指針)。
1歳期の言葉と身体、遊びのつながりは、1歳児の発達も参考にしてください。
2~3歳:言葉が結び付き、文の形が育つ
単語を組み合わせて関係を表す
2歳ごろから、「ママ きた」「もっと ちょうだい」のように、言葉を組み合わせる姿が増えていきます。
助詞や語尾はすぐに完成するのではなく、日々の会話の中で少しずつ使い分けられるようになります。
子どもの短い言葉を、「赤い車、速かったね」のように少しだけ広げて返すと、伝えたい内容を保ったまま、より長い表現の例を示せます。
毎回直す必要はありません。伝わった喜びが、次のやりとりへ向かう土台になります。
言いたいことと言えることの差が大きい時期
理解や思いが育つ一方で、それを十分な言葉にできず、泣く、怒る、手を引いて知らせることもあります。
これは「言葉を教えていないから」ではありません。
気持ちを受け止めたうえで、「自分でやりたかったね」「貸してほしかったのかな」と言葉を添えると、経験と表現が結び付きます。
2歳期の自己主張や遊びを含む育ちは、2歳児の発達で解説しています。
3~4歳:目の前にない経験も言葉で伝える
「なぜ?」「どうして?」で世界を確かめる
3歳ごろから、過去の出来事やその場にいない人について話し、理由を尋ねる姿が増えます。
質問は知識を集めるだけでなく、大人との会話を続け、自分の理解を確かめる働きもあります。
すべてに詳しく答えられなくても大丈夫です。
「どうしてだと思う?」「一緒に見てみよう」と返すことで、考えを言葉にするやりとりが生まれます。
ごっこ遊びの役や出来事を言葉で共有する
ごっこ遊びでは、「あなたはお客さんね」「次は病院に行くの」など、目に見えない役割や展開を言葉で共有します。
友達との行き違いも起こりますが、相手の話を聞き、言い方を変え、共通のイメージをつくる経験になります。
3歳期の会話や遊びの具体像は、3歳児の発達で詳しく見られます。
4~6歳:話す・聞く・考える力がつながる
出来事を順序立て、相手に合わせて伝える
4歳以降は、「最初に」「それから」「でも」などを使い、出来事や考えをつなげて話す姿が増えます。
相手が知らないことを補ったり、伝わらなければ言い直したりする力も育っていきます。
それでも、楽しかった出来事を順序立てて話すことと、けんかの最中に気持ちを説明することは同じ難しさではありません。
疲れや緊張、相手との関係によって、使える言葉は変わります。
絵本や物語、文字への関心が広がる
就学前には、物語の続きを想像する、登場人物の気持ちを話す、言葉の音のおもしろさに気づく、身近な文字の役割に関心をもつといった姿が見られます。
文部科学省の幼稚園教育要領も、絵本や物語に親しみ、経験や考えを伝え、相手の話を聞くことを幼児期の生活全体の中で育つ姿として示しています(幼稚園教育要領)。
文字への関心は、早く読めるかどうかの競争ではありません。名前を見つける、看板の意味を尋ねる、手紙を書いたつもりで線を描くといった「使いたい」という気持ちも大切な入口です。
4歳と就学前の姿は、4歳児の発達と5~6歳児の発達で詳しく説明しています。
研究から分かる「言葉が育ちやすいやりとり」
大切なのは、言葉の量だけでなく、やりとりの質
子どもが聞く言葉の量は語彙発達と関係しますが、多ければ多いほどよいと単純には言えません。
研究レビューでは、子どもの反応を受けて会話を続ける「相互作用」、多様で分かりやすい表現を使う「言語的な質」、経験を説明し考えを広げる「概念的な質」という三つの視点が整理されています。
どの関わりが役立ちやすいかは、子どもの年齢や発達によっても変わります(Rowe & Snow, 2020)。
この考え方は外国語にも関わりますが、乳児期の音の学習と将来の英語力は分けて考える必要があります。
感心のある方は、早期英語教育の開始年齢を研究から整理した記事をどうぞ。
37研究を統合したメタ分析では、大人が子どもの合図に気づいて応じる関わりと、子どもの言語との間に関連が示されました。
ただし、含まれた研究の多くは観察研究で、主に母子を対象としており、応答的に関われば必ず言葉が増えるという因果関係を証明したものではありません(Madigan et al., 2019)。
子どもの注目に寄り添い、少し待つ
大人が教えたい物へ注意を移させるより、子どもが今見ている物やしていることに言葉を添える方が、意味を共有しやすくなります。
「電車だね」「長いね」と短く表し、子どもの反応を少し待ちます。
返事は単語でなくても、視線、表情、身振りでかまいません。
問いかけも、答えを試すクイズばかりにする必要はありません。
「これは何色?」だけでなく、「どこへ行くのかな」「びっくりしたね」と、答えが一つに決まらない言葉を交ぜると会話が広がります。
絵本は「読ませる教材」より、共有する時間に
1~6歳を対象とした19件のランダム化比較試験、計2,594人をまとめたメタ分析では、保護者と絵本を共有する介入により、子どもの表出言語と受容言語に小さな改善が示されました。
一方、研究の方法や対象には幅があり、毎日読めば必ず伸びるという意味ではありません(Dowdall et al., 2020)。
最後まで読み切らなくても、好きなページだけ見る、絵を指さして話す、子どもの経験を思い出すだけで十分です。
絵本が負担になる日は、食事、着替え、散歩など普段の生活の会話も同じように大切です。
年齢の目安と個人差をどう読むか
複数言語の大規模な保護者報告データを比べた研究では、語彙が増える大まかな共通点が見られる一方、言語や子どもによる幅も確認されています。
対象は10言語、3万2,000人を超える子どもでしたが、日本語は含まれておらず、主に3歳前までのデータです。日本の一人ひとりの子どもへ、そのまま基準として当てはめることはできません(Braginsky et al., 2019)。
年齢別の説明は、「この年齢なら必ずできる」という線引きではなく、育ちの方向をつかむための地図です。
同じ子でも、よく話す場面と黙って見ている場面があります。
家庭では話すのに園では少ない、相手が一人なら話しやすい、といった環境による違いもあります。
二つ以上の言語に触れている子は、言語ごとの語彙だけでなく、知っている概念を複数言語にまたがって見ていく必要があります。
家庭で大切にしている言語を控えることが、一律に必要なわけではありません。
この記事では多言語発達の評価や支援までは扱わず、一般的な見方にとどめます。
英語を早く始めたときに日本語への影響をどう考えるかは、「英語を早く始めると日本語の発達に影響する?」で研究を整理しています。
言葉が気になるときは「数」だけで判断しない
言葉が気になるときは、単語数だけでなく、声や音への反応、簡単な言葉の理解、視線や身振りでの伝え方、人とのやりとり、園と家庭での違い、以前と比べた変化を合わせて見ます。
いつ、どんな場面で気になったかを短くメモしておくと、相談するときに状況を伝えやすくなります。
言葉や身振りが以前より明らかに減った、音への反応が気になる、伝わりにくさで本人の生活上の困りごとが続いていると感じる場合は、年齢表と比べて家庭だけで結論を出さず、かかりつけの小児科、自治体の保健センター、園の先生などへ相談してください。
日本では、市町村が1歳6か月児健診と3歳児健診を実施しています(こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」)。
健診の時期でなくても、自治体の窓口へ相談できます。
相談は、子どもや家庭を評価するためではなく、今のやりとりや生活を一緒に整理し、必要な支えを考えるためのものです。
まとめ
0~6歳の言葉は、声に気づくことから、視線や指さし、単語、文、会話、物語へと広がっていきます。
ただし、その道筋や速さは一人ひとり異なり、話せる単語の数だけで全体を判断することはできません。
大人にできるのは、たくさん教え込むことより、子どもが見ているものや伝えようとしていることを受け止め、少し言葉を添え、返事を待つことです。
絵本も遊びも生活の会話も、正解を求めず楽しめるときに、言葉を共有する場になります。
年齢の目安は、遅れを決める線ではなく、今ある力と次につながる姿を見つけるために使ってください。
気になることが続くときは、一人で判断せず、日々の様子を知る人や地域の相談先と一緒に考えていきましょう。
参考文献一覧
- Bergelson, E., & Swingley, D.(2012)“At 6–9 months, human infants know the meanings of many common nouns.” PNAS, 109(9), 3253–3258. DOI
- Fenson, L., Dale, P. S., Reznick, J. S., et al.(1994)“Variability in Early Communicative Development.” Monographs of the Society for Research in Child Development, 59(5). DOI
- Rowe, M. L., & Goldin-Meadow, S.(2009)“Early gesture selectively predicts later language learning.” Developmental Science, 12(1), 182–187. DOI
- 小椋たみ子(2007)「日本の子どもの初期の語彙発達」『言語研究』132, 29–53. DOI
- Braginsky, M., Yurovsky, D., Marchman, V. A., & Frank, M. C.(2019)“Consistency and Variability in Children’s Word Learning Across Languages.” Open Mind, 3, 52–67. DOI
- Rowe, M. L., & Snow, C. E.(2020)“Analyzing input quality along three dimensions: interactive, linguistic, and conceptual.” Journal of Child Language, 47(1), 5–21. DOI
- Madigan, S., Prime, H., Graham, S. A., et al.(2019)“Parenting Behavior and Child Language: A Meta-analysis.” Pediatrics, 144(4), e20183556. DOI
- Dowdall, N., Melendez-Torres, G. J., Murray, L., et al.(2020)“Shared Picture Book Reading Interventions for Child Language Development: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Child Development, 91(2), e383–e399. DOI
- 厚生労働省(2017)保育所保育指針
- 文部科学省(2017)幼稚園教育要領
- こども家庭庁 乳幼児健診に関する取組み